
※この記事では、自身のスペックを知り、その凹凸をチームに活かすことについて考えます。
エースにならなくてもチームのヒーローになれる
前回は、人間の身体を「骨(フレーム)と筋肉(アクチュエーター)」の物理メカニズムとして捉え、「てこの原理」を活用した効率的な動作と、それを身体に染み込ませる地道な「正しい努力(鍛錬)」のサイエンスを探究しました。
さあ、今回のテーマは、ボクたちが体育で最も他人の目を気にしてしまいがちな、「チームスポーツ(団体競技)」についてです。
サッカーやバスケットボールなどの授業が始まると、「スピードがある選手ばかりが目立って、運動が苦手な自分は邪魔になっているんじゃないか……」と不安になったことはありませんか?
もしそう思っているなら、大間違いです。
【社会編】の探究を思い出してください。社会には、いろいろな考え方や個性を持った人たちが生きています。全員がリーダーになる必要はありませんでしたよね。
体育のチームスポーツもまったく同じです。探究学習のOSを搭載した僕たちの体育は、全員をスター選手にすることを目指しません。データと客観的な視点を駆使して、「世界にひとつだけの自分の特性」を知り、チームの中で自分が一番輝けて、みんなの役に立つ「最高の居場所(ポジション)」を発見していきます。とても知的で、これ自体が、とても面白いゲームのようですよ。
データで可視化する「ボク・ワタシのスペック(強み)」
「じゃあ、どうやって自分にピッタリの場所(ポジション)を見つければいいの?」
ここで大活躍するのが、学校の先生が持っているかもしれない測定器や、スマートデバイスです。
ひと昔前の体育は、先生の「あいつは根性がありそうだから、ディフェンスだ!」というような、感覚的なアドバイスを頼りに役割を決められていたかもしれません。これでは、自分の強みは、きっと充分に活きていなかったでしょう。
しかし、今の探究学習の体育は違います!
・体格データ(身長・体重)
・俊敏性データ(反復横跳びなど、一瞬の速さ)
・持久力データ(シャトルランなど、長く動き続ける力)
・反応速度データ(合図に合わせて一瞬で動く速さ)
大人はぜひ、お子さんと一緒に、学校の身体測定やスポーツテストの結果を、他人とのタイム比較(順位)ではなく、「自分というメカのスペック」として客観的に見直す手伝いをしてあげてみてください。
「あ! 僕は身長は高くないけれど、反復横跳び(俊敏性)は優れているぞ!」
「私は走るタイムは遅いけれど、長く動き続ける力(持久力)の数値は高いわ!」
感覚ではなく「客観的なデータ(科学)」として自分のスペック(強み)が見えると、「僕はみんながバテる試合後半に、素早い動きが必要なポジションに入るのが良さそうだ」というような考えが浮かびます。自分をどう使えばいいかのアイデアが湧いて来ると、友達に対する劣等感は消えてしまうでしょう。
チームの凹凸をデータでならす
自分のスペックが分かったら、次はチームという全体の中での組み合わせを考えます。
「もし、全員がスター選手になりたいチームだったら、試合はどうなると思う?」
お子さんと一緒に、戦術ボードやタブレット上のコート図を使って、想像力を働かせてみてください。
全員がボールを追いかけてエースになろうとしたら、ディフェンスはいなくなり、チームはバラバラになって負けてしまいます。
サッカーやバスケというゲームにおいては、全ての役割の調和が、勝利という目的を達成するためには必要不可欠です。
・俊敏性スペックを持った子が、敵をかわしてボールを運ぶ
・持久力スペックを持った子が、広いフィールドを縦横無尽に走り回ってみんなを繋ぐ
・反応速度スペックを持った子が、敵の攻撃を瞬時に見抜いて守る
・体格スペックを持った子が、ゴール前で敵をブロックする
他人より優れているからその役割につくのではありません。自分の持っているスペック(凹凸)が、チームのパズルのピースとして完璧に当てはまり、納得できる居場所だから、その役割を担うのです。
君の凹凸がチームの勝利に欠かせない最強のピースとして活きる『最高の居場所』。それをデータで発見しよう。
「君の最強スペック」は、どのポジションで輝く?
体育編第3回の大人の伴走Tipsは、音(コード・BGM)をイコライズしたように、「自分の身体のスペック(凹凸)をデータで把握し、チームという社会の中で自分の強みが一番活きる最高の居場所(ポジショニング)を自ら発見・納得させる問い」を投げることです。
スポーツテストの結果を見直したり、コート図のタブレットを一緒に見ながら、最後のパスを投げます。
「学年で一番速い子と比べる必要なんてまったくないよ。データで可視化された君の『最強のデータ(俊敏性、持久力、体格などのうちのどれか)』。もし、明日の試合でこの強みを一番カッコよく発揮できて、みんなの役に立つ『最高の居場所(ポジション)』で活かすとしたら、戦術ボードのどこに君のピースを置いてみる?」
「僕は反応速度の数値が高いから、フィールドの中央(ミッドフィルダー)で敵のボールを奪って、みんなを助ける!」
「私は背が高い。自陣ゴール前でそれを活かし、ディフェンスとして敵をブロックして、チームを勝利に導く!」
自分の凹凸を、チームの力になるように配置してみる。チームでのポジショニングを組み立ててみる。
探究学習の【体育編】は、この個性の発見を経て、次は極限の持久力(根性論ではなく生理学的なスタミナ管理)の探究へと進みます。
(【体育編】第4回へ続く)
【おうちで試せるGoogle発の無料測定アプリ】
もともとGoogleの教育プロジェクトから生まれた無料アプリ『Science Journal (サイエンス・ジャーナル)』を試してみてください。スマホやタブレットをポケットに入れてジャンプや素早い動き(反復横跳びなど)をすると、内蔵された加速度センサーが働いて「自分の動きの激しさやスピード」をグラフでリアルタイム表示してくれます。「自分のスペックは、こんな数値」とたしかめる測定器としてぴったりです。
URL: https://science-journal.arduino.cc/
10歳からわかる「まとめ」
自分の強みをデータで把握して、チームで一番かがやく「最高の居場所」を見つけよう
【体育編】の第3回だよ。
サッカーやバスケのとき、「足が速い子」ばかりが目立って、自分は「邪魔」だと思っていない?
でもね、探究の【体育編】は、他人と比べる場所じゃないんだ! 全員がスター選手になる必要はないんだよ。
データを使って、「世界にひとつだけのキミの体」のスペック(強み・弱み)を科学して、チームの中でキミが一番輝けて、みんなの役に立つ「最高のポジション」を発見する知的ゲームなんだ。
「僕は身長は高くないけれど、一瞬の速さ(俊敏性: しゅんびんせい)は高いぞ!」
「私は持久力(じきゅうりょく)の数値が高いから、長く動き続けられるわ!」
感覚(かんかく)じゃなくて「客観的なデータ(科学)」として自分の強みが見えた瞬間、他人(ひと)と比べることなんてどうでもよくなるよね。自分をどう使えばいいか、アイデアが湧(わ)いてくるよね。
サッカーやバスケは、全員がエースになりたいチームだったら、負けちゃうんだ。
みんなの「それぞれ違う強み(個性)」をデータで把握(はあく)して、チームという全体に、一人ひとりの凹凸を、完璧(かんぺき)なパズルみたいに当てはめていく。
キミの凹凸がチームの勝利に欠かせない最強のピースになる「最高の居場所」。それをデータで見つけてみよう!
*本原稿は、ジェミ兄さんとの対話を基に構成されました。
※この記事では、自身のスペックを知り、その凹凸をチームに活かすことについて考えました。

ジャートム株式会社 代表取締役
学校・企業・自治体、あらゆる人と組織の探究実践をサポート。
Inquiring Mind Saves the Planet. 探究心が地球を救う。
