
※この記事では、音楽が脳に与える影響、それが私たちの行動に与える影響について考えます。
街全体を「音のラボ」にする
前回は、音楽が文字の読めなかった大昔から「言葉を超えた手紙」であり、ジャズやロックのように、差別や不公正に対して民衆の声を届ける「社会のイコライザー」であったことを探究しました。音楽は時代を動かす最強の言葉でしたね。
さあ、いよいよ【音楽編】もクライマックスへと向かいます! 今回のテーマは、僕たちの目の前にある、もっと身近で、もっと巨大な音楽の謎です。
「街にあふれる『ノイズ(雑音)』って、ただの邪魔な音なのかな? もしそれを、自分を助けてくれる音楽に変えられる魔法があったら……?」
「楽譜通りに正しく演奏しましょう」も大切ですが、探究学習のOSを搭載した僕たちは、きっとそれだけでは満足しないですよね。
音楽は、街全体やおうち部屋を実験場へと変える、【環境デザイン】と【脳科学】の究極のツールだということを見ていきましょう。
ノイズは、まだ誰も料理していない「音の素材」
「今日の街歩きで聞いた音を思い浮かべてみてください。工事現場のドリルの音、電車のガタゴト音、みんなの話し声。あれはただの『騒音』かな?」
大人はぜひ、お子さんと一緒に、街の中にあふれる「音(第1回の探究)」に耳を澄ませてみてください。
一見すると、街のノイズはバラバラで、僕たちの集中を邪魔する「うるさい邪魔者」に思えます。でも、探究学習のOSを搭載した僕たちが、これまでに手に入れた「音の魔法(波・リズム・コード・言葉)」を使えば、そのバラバラな素材を居心地の良い「環境(デザイン)」へ自由に書き換えることができます。
実験1: 工事現場のドリルの音
(第2回のリズムの探究を思い出して)「ガガガガ!」というドリルの音も、その裏にある一定のリズム(パルス)を見つけ出し、自分の手拍子(クラップ)と組み合わせたら? ただの騒音が、カッコいいダンスミュージックの「ドラム」に変身します。
実験2: 電車のガタゴト音
(第3回のコードの探究を思い出して)「ガタンゴトン」という重い音に、キーボードでホッとする「おうちの音(トニック)」を重ねてみたら? 不安な揺れが、心地よく眠れる「安心のBGM」に早変わりします。
ノイズとは、捨てられるゴミではありません。私たちが仕組みを理解して新しい命を吹き込むのを待っている「最高の音の素材」なのです。
なぜ無音より「適度なBGMあり」の方が勉強が進むの?
さらに面白いことに、この「ノイズと音楽の関係」は、君の毎日の勉強や作業の効率にも直接関係しています。
心理学や脳科学の研究では、「人間は、完全な無音(しーんと静まり返った部屋)にいるよりも、適度な雑音(カフェのガヤガヤ音や雨の音など)がある方が、脳のリラックスと集中力が最も高まる」ということが分かっています。
シーーーンとした無音の部屋だと、脳は逆に「静かすぎる! 何か危険が起きるかも?」と緊張して疲れやすくなってしまうのです。適度な音(BGM)を背景に満たすことで、脳の余計な緊張を遮断(しゃだん)して、集中しやすい環境を作ることができるんですね。
BGMが「邪魔」にならないための3つの工夫
「じゃあ、音楽を聴きながらの『ながら勉強』は、いつでも最高の効果が出るの?」
ここで一緒に「音楽が主役に躍り出てこないための工夫」を探究してみましょう!
歌詞のある大好きなJ-POPなどを聴きながら勉強すると、脳(言語をつかさどる部分)が「歌詞を追うこと」と「勉強の文字を読むこと」でバッティングを起こし、音楽が勝手に主役(メインステージ)に躍り出て勉強の邪魔をしてしまいます。
BGMを、その他の通り、しっかり「背景(バックグラウンド)」に留めて、集中力を跳ね上げるためのルールは3つです!
1. 歌詞のない音(インストや自然音)を選ぶ
言葉のないピアノ、ジャズ、雨の音やカフェの雑音を選ぶと、脳が言葉を追いかけず、完璧な背景になってくれます。
2. 作業に合わせて音を切り替える
計算や漢字練習など「手を動かす作業」にはテンポの良いBGMを。国語の読解や作文など「深く考える作業」には、川のせせらぎなど自然音だけにして脳の言語エリアをあけておきましょう。
3. 音量は「小さな話し声」くらいに絞る
大きな音は脳が勝手にそれを主役にしてしまいます。「かすかに聴こえるかな?」くらいの小ささに調整するのが、とっておきの技になります。
音は、ただ聴くものではなく、僕たちが過ごす空間や脳の集中力を住みやすく整えるための「見えない建築資材」だともいえるものです。
子どもたち3人が、街の音を録音(サンプリング)しながら、「歌詞のない音にアレンジしたら、勉強がめちゃくちゃはかどるBGMになった」と笑顔で発見していく。そんな、音を使って世界と自分をデザインする探究も面白そうです。
君なら街のノイズをどんなBGMに変える?
音楽編第5回の大人の伴走Tipsは、音を技術ではなく「社会や自分の脳をデザインするツール」として捉え直す問いを投げることです。
お家に戻ったら、今日聞こえた音を思い出しながら、最後のパスを投げます。
「前回までの探究を経て、音で想いを届ける魔法を知ったね。じゃあ、今日聞いた『工事の音』や『雨の音』。もしあのバラバラなノイズを、君だけの魔法(歌詞のないリズムと和音)を使って、自分の勉強が一瞬で終わったと感じてしまうような『最強のBGM(環境音楽)』に変えるとしたら、どんな音を重ねてみる?」
「工事のドリル音をサンプリングして、計算ドリルが一瞬で終わる『集中BGM』を作ってみたい」
「雨の音と電車の音を組み合わせて、本を読むときに頭がスッキリする『静かなカフェの音』をデザインしてみたい」
楽譜通りに演奏できなくても大丈夫。街のノイズを自分だけのイコライザーで調整するように、音のデザインを組み立ててみましょう。
探究学習の【音楽編】は、この環境と脳のサイエンスを経て、いよいよ次回、違う音(ノイズ)同士が完璧に響き合い、自分自身の最高集中(ゾーン)と繋がる壮大なグランドフィナーレ(最終回)へと向かいます。
(【音楽編】第6回へ続く)
10歳からわかる「まとめ」
街(まち)のノイズやBGMは、キミの脳(のう)を集中させる「魔法(まほう)の環境(かんきょう)音楽」だ!
【音楽編】の第5回だよ!
街を歩いていると、工事現場の音や電車の音。うるさい「雑音・騒音」がいっぱい聞こえるよね。
「なんで、雑音があると集中できないのかな?」って思っていなかった?
脳科学(のうかがく)の研究では、「しーんと静まりかえった部屋よりも、カフェで流れる音楽や雨の音みたいな『適度な音(BGM)』がある方が、脳はリラックスして勉強に集中できる」ということが分かっているんだよ。
でもね、好きな歌(歌詞のある曲)を聴きながら勉強すると、脳が歌詞を追いかけちゃって勉強の邪魔(じゃま)になっちゃうんだ。「ながら勉強」がダメといわれるのは、これが理由なんだね。
音楽を「最強のBGM」にして勉強をはかどらせる3つのルールを教えるね。
1. 歌詞のない音(ピアノの演奏や雨など自然の音)を選ぶと、脳が歌詞にジャマされない
2. 計算のときはノリノリな音、作文のときは静かな音。そのように作業で音を変える
3. 音量は「小さな話し声」くらい小さくする
工夫次第で、ノイズやBGMは、キミの集中力を引き出す、脳にとっての「魔法ツール」にもなるんだよ。
キミだけの魔法のBGMを作って、勉強や作業をはかどらせてみよう。
【おうちで試せるGoogleの無料ツール】
Google Arts & Cultureの中にある『Chrome Music Lab』の『Song Maker (ソング・メーカー)』を開いてみてください。マス目を適当にポチポチ押すだけで、自分だけのオリジナルのメロディやリズムパターン(環境音楽・BGM)を一瞬で作ることができます。「歌詞のない音を組み合わせると、こんな集中できる素敵なBGMになるんだ」と直感的に体験するのにぴったりです。
URL: https://musiclab.chromeexperiments.com/Song-Maker/
*本原稿は、ジェミ兄さんとの対話を基に構成されました。
※この記事では、音楽が脳に与える影響、それが私たちの行動に与える影響について考えました。

ジャートム株式会社 代表取締役
学校・企業・自治体、あらゆる人と組織の探究実践をサポート。
Inquiring Mind Saves the Planet. 探究心が地球を救う。
