
※この記事では、子どもの疑問や発見を、一生もののオペレーティングシステムとして定着させる鍵について考えます。
幼少期の「みて、みて」は、探究の産声
園児たちの口癖は、決まって「ねぇねぇ、みてみて!」です。
ダンゴムシを見つけたとき。
水たまりを飛び越えたとき。
何やら不思議な形の雲を見つけたとき。
彼らは、自然界という名の巨大なパズルの中で見つけた小さなきらめきを、まわりの大人に共有したくてたまらないのです。
これに対して、私たちまわりの大人がどう向き合うかが、実は子どもの「探究の心」のすべてを左右すると言っても過言ではありません。
忙しいからと「はいはい、あとでね」や「うるさいなぁ」の一言で片付けてしまえば、子どもは「大人は自分の不思議(探究)に興味がないんだ」と学習してしまい、その小さな芽を摘み取ってしまいます。
では、どんな言葉をかければ、この「みて、みて」を「一生モノのサイエンスOS」へと育てていくことができるのでしょうか。
①「正解」を一つに絞らない: 思いつくまま、たくさん吐き出させる
「どうして氷は水に浮くのかな?」と子どもが不思議に思ったとき。
あなたは「それはねぇ、、、」とすぐに答えを教えているでしょうか。あるいは、「どう思う?」と聞くでしょうか。その後「思ったことを言ってごらん。間違ってもいいから」と言うでしょうか。この、ついつい言ってしまいがちな「間違っててもいいから」という前置き。よく考えてみたら、果たして必要なものでしょうか。この言葉によって、子どもに「正しい答え」「間違った答え」を意識させてしまっているかもしれません。
それよりも、もっと自由に、心を開いてこう声をかけてあげるのはどうでしょう。
「本当だね、なんでだろう! 思いつくだけ、とにかくたくさん予想を言ってみて!」
「軽いから!」「冷たいから!」「プールが好きだから!」……なんでも構いません。脳にブレーキをかけず、思いつく限りの仮説(予想)をたくさん外に出すこと。これこそが、能動的なアウトプットの第一歩となります。
私達はこれまで、「それまでの常識がひっくり返った体験」を数多くしてきました。ここでも何度も例に出していますが、「走る時に水を飲むな」は「飲め」に180度ひっくり返りました。「間違い」は、正確には「今は、そうではないと考えられている」くらいの意味かもしれません。子どもの直感が、将来、正しかったと証明されることがまだまだあるのではないか。そんな気持ちで接して、大人も一緒に面白がりましょう。
② 困ったら、他の似たことに「横滑り」するヒントを
たくさん予想を出しているうちに、子どもが「うーん」とアイデアに詰まってしまったら、大人の「最高のパス(問い)」を出すチャンスです。
答えを直接教えるのではなく、別の似たような事象を連想させるヒントを、優しく差し出してあげるのです。
「そういえばさ、お風呂に入れた『あのおもちゃ』の時はどうなってたっけ? それと何か似たところがあったりしないかなぁ?」
「『あのおもちゃ』と『そのおもちゃ』で、何か、ちがわなかった?」
「あっ、しずんだ『おもちゃ』があったよ」
「『うくの』と『しずむの』は、どこがどうちがってたか、おぼえてる? もう一回、今晩、お風呂でやってみようか?」
この問いかけによって、子どもの脳内で、過去の経験(点)と目の前の不思議(点)が、見えない一本の補助線でピピッと繋がります。
「あっ、かるいのと、おもいのだ。ういたのには、くうきが入ってたよ!」
そんな気づきを自分で導き出せたとき、子どもの中には、算数の難問を解いたときのような「ニヤリ」や、「パッと顔が明るくなる」ような喜びが生まれるのです。
③ デジタルの奇跡: 4歳と62歳の自分同士で対話も可能
そして、ここからが今回の、そしてこの探究学習シリーズの「最大のキモ」となる話です。
みなさんは、ご自身が子どもの頃に「四苦八苦して、試行錯誤したプロセスの痕跡」を持っていますか?
おそらく、ほとんど残っていないはずです。かつては、ノートや工作などの実物は場所を取るため、大掃除のたびに捨てられてしまうのが宿命だったからです。
しかし、現代は違います。これこそが、昔と現代の決定的な違いです。
子どもが自分で書いた「謎の実験メモ(落書きのようなスケッチ)」や、実験をしている時の「真剣なニヤリ顔の写真」、あるいは気づきを語ってくれた「短い音声データ」を、ドンドンどんどん、クラウド上のフォルダ(Googleドライブなど)に放り込んで、デジタル保存しておくことができるのです。物理的な場所を取る心配は、もう一切必要ありません。
さて、それらのデジタルデータを保存する際には、ちょっとしたコツ(Tips)があります。
それは、「日付+名前+キーワード」で統一して保存することです。
(例:20260720_りくと_氷が浮く実験.jpg)
つまり、あとから「検索」一発で引き出せるようにしておくのです。
こうしてクラウドの中に、子どもの「四苦八苦のプロセス」をどんどん貯めていきます。
そうすれば、いつかその子が大きくなり、人生の壁にぶつかったり、自分が本当にやりたいことを見失いそうになったとき、検索一発で、あの頃の「自分自身のピュアな探究の原点」を引き出すことができます。
もしかしたら、62歳になったその子が、4歳の頃の自分のメモと出会い、「そうか、自分は昔からこういう不思議にワクワクする人間だったんだ」と、時空を超えて深い対話をすることだってできます。人生百年時代。62歳の今からでも、タイムリミットまで、まだあと38年。笑。
デジタルテクノロジーは、ただの効率化ツールを生み出すものだけではありません。
子どもの愛おしい「問いのプロセス」を一生枯らさずに守り抜く、人類史上最強の「知のタイムカプセル」なのです。
まわりの大人の温かい声かけと、デジタルの力。
この2つがあれば、子どもの「みて、みて」は、未来の自分を支える一生モノの宝物へと姿を変えていきます。
(理科編・完結へ続く)
10歳からわかる「まとめ」
きみが、けんめいに、なやんで書いた「らくがき」は、未来のきみを助けるスーパーアイテム!
小さいころ、みんなは「ねぇねぇ、これ見て!」って、まわりの大人にたくさん話しかけていたかな?
実は、あれってとっても大切な「科学者(かがくしゃ)の第一歩」なんだよ。
なぞをみつけたとき、「なんでかな?」と思いつくアイデアを、とにかくたくさん口に出してみる。
もし、考えがまとまらなくなって困ったら、まわりの大人は答えを教える代わりに、「そういえば、あのお風呂のおもちゃのときはどうだったかな? 似ているところはない?」って、ヒントのパスをくれるはず。
そうやって、あぁでもない、こうでもないと悩んで、自分で「あっ!わかった!」とひらめいたときは、最高にうれしいよね。
そしてね、もうひとつ、すごい秘密を教えるよ。
みんなが頭を悩ませて書いた「めちゃくちゃな計算(けいさん)」や「実験(じっけん)のらくがきスケッチ」。むかしは、お部屋がせまくなるからって、いつの間にか捨てられちゃうことが多かったんだ。
でも今は、タブレットやスマホをつかって、インターネットの「クラウド(まほうの、そうこ)」に、ぜんぶ保存(ほぞん)しておくことができる!
きみが大人になって、おじいちゃんやおばあちゃんになったとき。
4歳や10歳のころに書いた「あの日のがんばったメモ」をインターネットでパッと引き出して、むかしの自分と対話(たいわ)することだってできるんだよ。
きみが不思議(ふしぎ)に立ち向かったその「がんばった証拠(しょうこ)」は、きみが大人になったときに、きみを助けてくれる一番の宝物になるんだ!
*本原稿は、ジェミ兄さんとの対話を基に構成されました。
※この記事では、子どもの疑問や発見を、一生もののオペレーティングシステムとして定着させる鍵について考えました。

ジャートム株式会社 代表取締役
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Inquiring Mind Saves the Planet. 探究心が地球を救う。
