
※この記事では、GA&Cの「理科での活用」を紹介します。
天才たちの頭脳を覗き見る「魔法の虫眼鏡」
前回の記事では、理科の「枠(制限)」とは、人間が決めたルールではなく、「自然が定めた絶対的な法則」であるとお話ししました。重力や光、あるいは気象や地震。人間は自然のルールに支配されているからこそ、その不自由さに知性で立ち向かうことで、天気予報を進化させるようなクリエイティビティを発揮してきたのです。
では、かつての天才科学者たちは、その「絶対に破れない自然のルール」の正体を、一体どうやって解き明かしてきたのでしょうか?
教科書を開くと、そこには「地動説」「万有引力」「相対性理論」といった、完成された綺麗な答え(公式)だけが並んでいます。これらをただ暗記するだけでは、前回の話の通り、ただの「つまらない作業」になってしまいます。
そこで登場するのが、私たちの最強の相棒、無料のデジタルツール『Google Arts & Culture (GA&C)』です。
GA&CがNASAやスミソニアン博物館、ロンドン科学博物館など世界中の研究機関と共同で立ち上げた巨大プロジェクト「Once Upon a Try (ひらめきの瞬間)」のページを開いてみてください。そこにあるのは無機質な文字ではありません。
例えば、ガリレオ・ガリレイが1610年に木星を観察し、宇宙の常識をひっくり返した「本物の手記」を拡大して見ることができます。茶色く色褪せた紙の上に、彼がその夜に観察した木星と、その周りをまわる小さな衛星の位置が、インクの滲みとともに生々しく点 (・) でスケッチされているのです。これを見ると、天才たちの偉大な発見が、日々の丁寧な観察から始まっていることを改めて実感することができます。
あるいは、アイザック・ニュートンが「リンゴが落ちるのを見たあの日の思い出」を語った、友人による直筆の手紙 (1752年)。さらには、アインシュタインが相対性理論を導き出す途中で、あぁでもない、こうでもないと数式を書き殴り、途中でバツ印 (×) をつけて思考を四苦八苦させた「生の計算ノート」までが、指先ひとつで、毛羽立った紙の質感まで見えるほどの超高解像度で遺されています。
私たちはソファにいながらにして、天才たちが自然のルールを前に四苦八苦し、謎が解けて「ニヤリ」と顔をほころばせた、その脳内を直接覗いてみることができるのです。
また、宇宙の始まり「ビッグ・バン」の様子を、別にダウンロードした iOSアプリ「Big Ban ARアプリ」で体験できるような仕掛けもあります。
「問いのバトンリレー」で常識の枠を突破してきた天才たち
GA&Cで彼らの足跡をたどると、科学の歴史が美術の歴史と全く同じ構造であることに気づきます。それは、先人が作った「常識という枠」に対して、新しい「問い」をぶつけ、その枠を内側から押し広げてきた『問いのバトンリレー』だということです。
分かりやすい例が、宇宙の仕組みをめぐるバトンリレーです。
かつて、人類にとっての絶対的な常識 (枠) は「天動説」でした。「世界は神様が作ったのだから、地球を中心にすべての星が回っているに決まっている」というように、完璧に信じ込まれていた枠です。
そこに最初の強烈な問いを立てたのが、ニコラウス・コペルニクスでした。彼は天体を観察する中で、「もしかして、真ん中にいるのは地球ではなく、太陽なのではないか?」という地動説を唱えます。これが最初のバトンです。
しかし、当時はまだそれを百パーセント証明する「道具」がありませんでした。そのバトンを受け取り、自作の天体望遠鏡という「新しいレンズ」で木星の衛星を実際に観察し、「地球の周り以外を回っている星がある。やっぱり地球のほうが回っている!」と確信を持って問いを証明したのが、先ほどのスケッチを遺したガリレオでした。
さらにそのバトンは、「じゃあ、どうして地球が回っているのに、私たちは宇宙に放り出されないんだ?」という次の問いへと繋がり、ニュートンの「万有引力」へと引き継がれていきます。
彼らはみんな、教科書に載っている答えを丸暗記した人たちではありません。前の時代の人が作った「常識の枠」を疑い、自分の目と手で「確かめに行く(探究活動する)」ことによって、世界をより正しい仕組みへとアップデートしてきたクリエイターたちなのです。
教科書を閉じて、科学史の「問い」を追体験する
家庭で子どもの理科の探究を伴走するとき、この「問いのバトンリレー」の視点は強力な武器になります。
子どもが学校で「今日はニュートンっていう人を習ったよ」と言ったら、ただ「すごい人だね」で終わらせてはいけません。すぐにタブレットでGA&Cを開き、ニュートンの生原稿や、アインシュタインのバツ印だらけのノートを拡大して一緒に見つめてみるのです。
「見てごらん、この天才たちも、最初から答えが分かっていたわけじゃないんだよ。君と同じように『どうして?』って四苦八苦して、ノートをぐちゃぐちゃにしながらナゾを解いたんだ。かっこいいよね。君ならこのノート、どこが間違っていると思う?」
こうして歴史上の天才たちの「問いの瞬間」を親子で追体験すること。それ自体が、子どもにとって、最高の理科の時間になるでしょう。まるで、あの頃の私が、ゲーム感覚で、算数の難問を解いてワクワクしていたように。
知ったら、見たら、すぐ確かめに行く。
歴史上の科学者たちが全員やってきたこのシンプルな活動を、今度は私たちが実践する番です。
次回は、このGA&Cを本当の「魔法の虫眼鏡」にして、いよいよ家の中から外のリアルへと飛び出す、具体的な実践手法をお届けします。
(第4回へ続く)
10歳からわかる「まとめ」
むかしの天才科学者たちは、みんなノートをぐちゃぐちゃにして悩む「うたがい深いクリエイター」だった!
理科(サイエンス)の教科書を見ると、「万有引力」とか「地動説」とか、むずかしい言葉がキレイに並んでいるよね。でも、これらをただ暗記するだけなんて、つまらない!
本当の科学の歴史は、むかしの天才たちが「前の時代の人が決めた『あたりまえ』って、本当につじつまが合っているのかな?」と、大マジメにうたがって、新しい質問(問い)をぶつけてきた、カッコいい歴史なんだよ。
美術編でつかった魔法のアプリ「Google Arts & Culture」をひらくと、ガリレオが400年以上まえに木星を見ながら書いた「本物のスケッチ」や、アインシュタインが計算をまちがえて「× (バツ)」をいっぱいつけている「秘密のノート」を、超アップで見ることができるんだよ。
彼らはみんな、最初から答えを知っていたわけじゃない。前の人から「問いのバトン」を受け取って、あぁでもない、こうでもないと四苦八苦して、ナゾを解いて最後に「ニヤリ」とした人たちなんだ。
だからみんなも、教科書の文字をおぼえるのは終わりにして、タブレットで天才たちの頭の中をのぞきにいこう。そして、「ボクなら、わたしならどうする?」って、次のバトンを受け取る準備をはじめようね!
*本原稿は、ジェミ兄さんとの対話を基に構成されました。
※この記事では、GA&Cの「理科での活用」を紹介しました。

ジャートム株式会社 代表取締役
学校・企業・自治体、あらゆる人と組織の探究実践をサポート。
Inquiring Mind Saves the Planet. 探究心が地球を救う。
