将来を予測する

科学技術

百年先の世の中のことはさすがに置くとして、五年、十年先の社会のことを予測しようとする際、真っ先に気になるのは科学技術の研究開発状況でしょうか。各分野の専門家が、現状を見ながら、この技術は何年後には実用化できそうだ、実用化されるとこんなサービスが出現する、といったことを発表してくれています。

例えば、下記の科学技術白書には、将来予測をするための主な手法の紹介もしつつ、それに則って実施された予測の結果が示されています。また、過去の予測と実際に起こったこととの比較も紹介されており、その意味でも興味深い読み物となっています。

【参照】 文部科学省 科学技術白書 令和2年版 「2040年の未来予測」

その他の国際機関発表資料

科学技術分野以外の主な予測資料には、人口動態、気候変動、エネルギー消費・生産、経済成長、等があります。それぞれ各国や国際的な専門機関が発表しています。長期の予測が可能なものと、経済成長のように短期の予測が中心のものとに分かれます。分野それぞれに、適切な予測が可能な期間が異なってくるのはやむを得ないことです。

また、先の科学技術との関連で、科学技術の進展具合によっては、これらの予測に軌道修正が必要になることもあるでしょう。一方で、こちらの、いわば「基礎条件」の変動が、必要とされる科学技術の方向性に影響を与えることもありそうです。

政策の影響

一般にあまり意識しないかもしれないことには、各種の政策が与える将来への影響があるでしょうか。内閣府のページを見ると、経済財政、科学技術・イノベーション、地方創生、暮らし、防災、沖縄および北方対策、外交・安全保障、国の基盤を支える制度等、といった項目が並んでいます。

また、これとは別に、各省庁の政策もあります。総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省、国家公安委員会(警察庁)、デジタル庁、復興庁と、相当な数に上ります。どれも国民生活に大きな影響を持ちますが、文部科学省管轄の教育政策などは、子ども達の価値観形成に大きく影響するものです。将来予測の検討に参照必須といえる政策の一つでしょう。

学習指導要領

なかでも学習指導要領が有名ですが、これは、およそ10年に1度の頻度で改訂される文部科学省が定めた教育課程(カリキュラム)基準です。子供たちの教科書や時間割はこれを基に作られ、全国どこの学校でも一定の水準が保てるようにされているわけですから、全国一斉での実施が保証されている政策であるともいえます。これが定期的に改定されるのは、学校が社会と切り離された存在ではないからです。グローバル化や急速な情報化、技術革新など、社会の変化を見据えるなら、子供たちがこれから生きていくために必要な資質や能力について見直しを行う必然があります。

文部科学省の「学習指導要領改定の考え方」という資料には、「よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を共有し、社会と連携・協働しながら、未来の創り手となるために必要な資質・能力を育む『社会に開かれた教育課程』の実現」の言葉が並びます。これに従って、教わる科目が広がったり中身が深まったり、科目横断の「ものの見方」を示唆されたりしつつ「未来の創り手」が養成されるのですから、未来予測において学習指導要領は重要な指針となります。未来の創り手はどのように未来を変えていくだろうかを想像しつつ、それを予測に加味することは楽しいことに違いありません。

学習指導要領の内容等に関連する過去の連載記事はこちらです。

第1回 「論破」よりも建設的な対話の方が役立つワケ

第8回 日本の高校科目「探究」の活かし方

第20回 大人として、アップデートを怠らない

第35回 「総合」「探究」は何のため

第41回 2023年「探究雑観」

10歳からわかる「まとめ」

・将来予測において、科学技術の進展は大変気になるところ

・また、基礎条件となる、人口動態、気候変動、エネルギー消費・生産、経済成長、等も同様に気になる

・人々の生活がどうなるかを予測するにあたっては、価値観の変遷も気にすべきだろう

・その意味で、人々の価値観に影響を与えそうな政策には留意すべき

・中でも、教育政策は、特に重要なものの一つだろう

以下、余談です。

学習指導要領の厚み

学習指導要領は、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、と学校種別にあり、加えて、それぞれの特別支援学校のものもあります。小学校や中学校はそれぞれ300ページ超え、高等学校は600ページ超えといった大作でした。先生たちが縦・横の連携も含めて読み通すのは大変だろうと感じます。各改定のポイントだけでも数ページずつの資料です。

【参照】 幼稚園教育要領、小・中学校学習指導要領等の改定のポイント、高等学校学習指導要領の改定のポイント

この重厚な中身を見ると、別の意味でも、教育課程を「社会に開かれた」ものにしなくてはならないと感じてしまいます。要領通りに進めるには、社会の協力が必須です。

学習指導要領の改定を受けて、毎回、先生たちには新たな取り組みが求められていることでしょう。変わらぬ価値を伝え続けるためにも、伝え方や指導の仕方を変えねばならないことがあるはずです。ましてや、新しい価値観を伝えていくとなれば、自身の考え方や物事に対する捉え方自体を変えなくてはならないことも出てくるでしょう。先生たちの役割は益々重要になってきそうです。常にフレッシュな心身で対応してもらわなくてはならない先生たちを、まずは「雑用から解放」することは急務だと感じてしまいます。

第49回「評判を『管理』する」を読む