英語は「自分の気持ち」を伝える道具

※この記事では、【英語編】開始にあたって、「自分の意思を伝える」という本来の言葉の目的に沿った英語学習のやり方について考えます。

教室で習う英語と、実際の生活で使う英語のズレ

音楽、体育に続いてスタートする新しい探究の舞台は、「英語」です。
日本の英語教育において、かつて教科書の最初に登場する代表的なフレーズといえば「This is a pen. (これはペンです)」でした。
しかし、冷静に普段の生活を振り返ってみてください。目の前にあるペンを指さして「これはペンです」と誰かに宣言する場面は、実際の社会でどれほど存在するでしょうか。おそらく、ほとんど思い当たらないはずです。
日常のコミュニケーションで本当に必要なのは、「これはペンです」という事実の記述ではありません。「ペンを貸してください」あるいは「このペンを使ってもいいですか」といった、自分の気持ちや意思を相手に伝える言葉です。
文法を教えるためだけに作られた人工的な例文(教室の英文)から離れ、「自分が今、何を伝えたいのか」という意思表示から英語の探究を始めていきましょう。

文法は「自分の意思」を届けるための組み立て説明書

このように書くと、「文法なんかどうでもいい、とにかく通じればいいのだ」という極端な会話至上主義のように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。文法を軽視するつもりは毛頭ありません。
文法とは、暗記すべき無味乾燥なルールではなく、「自分の気持ちを誤解なく相手に届けるための構造(組み立て)の説明書」です。
文法を教えるための例文: 「これはペンです」(使う場面が乏しく、記憶に定着しにくい)
意思から逆算する英文: 「〇〇したい (I want to…)」「△△してほしい (I need you to…)」(明確な目的があり、すぐに使える)
「〇〇したい」「△△してほしい」という自分の欲求や意思がまず存在し、それを正しく相手に手渡すために文法という骨組みを使う。順序を逆にすることが、探究学習における英語のアプローチです。

スラングではない、丁寧で引き締まった英語の美しさ

「会話から始める」と言うと、俗語(スラング)や崩した表現ばかりを想像される方がいます。しかし、日常やビジネスの現場で求められるのは、決してそのような言葉遣いではありません。
自分の意思を伝える言葉とは、品格のある、きちんとした文章です。
丁寧で引き締まった(筋肉質の)英文の構造を理解し、手で正しく書き起こし、口に出していく。このプロセスを経ることで、単なる丸暗記ではない「一生モノの言葉の骨組み」が自分の中に作られていきます。
英語は特別な学問ではなく、あなたの思いを世界へ届けるための便利な道具なのです。

今、一番英語で伝えてみたい「自分の気持ち」は何?

英語編第1回の大人の伴走Tipsは、「子ども自身が今、誰かに伝えたい本気の意思」に目を向けさせる問いを投げることです。
学びの始まりに、子どもへ最初の問いを投げかけてみてください。
「今だれかに英語で一番伝えてみたい『〜したい』や『〜してほしい』という気持ちは何かな?」
「大好きなゲームの続きをやりたい、ゲームの、特にここが好き、って海外の人に伝えてみたい」
「このおもちゃの使い方のコツを教えてほしい、って聞いてみたい」
自分が本当に使いたい言葉だからこそ、その裏側にある文法の仕組みを知りたくなります。
次回第2回では、文法を「暗記物」から「解剖ツール」へと変え、実際に手で書いて構造を確認する「書くこと(筆記)」の科学的効果を探究していきます。どうぞお楽しみに。
(【英語編】第2回へ続く)

【おうちで試せるGoogleの無料ツール】
Googleの翻訳サービス『Google 翻訳』を使ってみましょう。
コツは、1回訳して終わりにしないことです。
たとえば「ペンを貸して」と入れたあと、「ペンをお借りできますか」「もしよろしければ、ペンを使わせてもらえませんか」と、日本語の丁寧さや言い回しを2回、3回と変えて再入力してみます。
日本語のニュアンスを変えるだけで、英語の形や使われる言葉がガラリと変わる様子を観察してみましょう。自分にぴったりの「しっくりくる英語」を見つける実験です。
URL: https://translate.google.co.jp/

【具体例】日本語翻訳アレンジ実験

1. 「感情・距離感のメーター」実験
伝えたいひとつの意思(例: 「ペンの貸し借り」)に対して、相手との関係性や距離感を日本語で書き分け、英語の「グラデーション」を観察します。
レベル1(ダイレクト): 「ペンを貸して。」
→ Can I borrow your pen? (シンプルで直接的)
レベル2(丁寧語): 「ペンをお借りしてもよろしいですか。」
→ Could I borrow your pen, please? (丁寧で遠慮がちな助動詞へ変化)
レベル3(ビジネス・超丁寧): 「差し支えなければ、ペンをお借りすることは可能でしょうか。」
→ Would it be possible for me to borrow your pen? (仮定法を用いたフォーマルな構造へ劇的変化)
入力する日本語を少し崩したり整えたりするだけで、英語の文が「カチッ」と切り替わる瞬間を目の当たりにでき、第3回で扱う「感情のグラデーション」の先取り体験にもなります。

2. 「主語(視点)のひっくり返し」実験
日本語の「誰がどうする」という視点を変えて再入力させる実験です。英語が「主語(S)と動詞(V)」の関係性をいかに重視しているかが浮き彫りになります。
自分視点: 「私はあなたのペンを使いたい。」
→ I want to use your pen.
相手視点: 「あなたは私にペンを貸してくれる?」
→ Will you lend me your pen?
状況視点: 「ペンがあれば助かるのですが。」
→ It would be helpful if I had a pen.
同じ「ペンを使いたい」という意思でも、主語を組み替えるだけで英語の骨組み(S+V+O/C)がガラリと変わる面白さを体験できます。

10歳からわかる「まとめ」

「これはペンです」はおしまい。英語は「自分のやりたいこと」を伝える道具なんだ。
【英語編】の第1回だよ。
英語の教科書で、一番最初に出てきていた「This is a pen. (これはペンです)」という言葉を知っているかな?
普段の生活で「これはペンです。」なんて話す場面は、めったにないよね。
本当に言いたいのは、「ペンを貸して」とか「いっしょに遊ぼう」とか、そういう自分の気持ちのはずなんだ。英語は、「〜したい」「〜してほしい」という自分の気持ちを世界の人に伝えるために使う道具なんだよ。
英語のルール(文法)は、難しい勉強じゃなくて、自分の気持ちを正しく組み立てるための「説明書」みたいなものなんだ。
きちんとした正しい英語を使って、キミの本当の気持ちを世界に届ける探究をはじめよう!

*本原稿は、ジェミ兄さんとの対話を基に構成されました。

※この記事では、【英語編】開始にあたって、「自分の意思を伝える」という本来の言葉の目的に沿った英語学習のやり方について考えました。