歪んだ古い「枠」はイコライザーで整える

※この記事では、「歴史」を、「歪んだ枠を整えようと積み重ねた人間の活動の記録」という側面から見て、考えます。

歴史の教科書は、「社会のバランス調整」の記録

全2回にわたってお届けしてきた『Google Earth (グーグルアース)』を使った「地理」の冒険、楽しんでいただけたでしょうか?
地形や気候という地球の制限に対して、人間の営みが時代の潮目でグニャグニャと形を変えていくダイナミズムを体感しましたね。
さあ、次は地理のバトンを持って、「歴史(ヒストリー)」の世界へ飛び込みましょう!
「歴史は、年号や人の名前を覚えるのが大変だから苦手…」
そんな子どもたちの声をよく聞きます。でも、もし家庭で歴史の教科書をひらくなら、そこに書かれていることを単なる暗記のデータとして扱うだけでは、何とももったいない!
なぜなら、歴史とは、先人たちがその時代の不自由な約束事(枠)に向き合い、「みんなが納得できる平等なバランス」を目指して、社会の仕組みをアップデートしてきた熱いドラマの記録だからです。

かつては「身の安全」を守るための取引だった

歴史をひも解くと、「身分制度」や不平等に見える「法律」など、現代の私たちの感覚からは「なぜこんな不自由な枠を作ったんだろう?」と不思議に思うルールがたくさん登場します。
一部の権力者だけが楽をして、民衆に皺寄せが行っていた時代があったのは確かです。しかし、実はそのルールが生まれた当初は、「不自由さと引き換えに、みんなの『身の安全』を確保する」という、渋々ながらも成立していたトレードオフ(取引)だった側面もあったのでしょう。たとえば、戦乱の嵐が吹き荒れる時代には、「強い力を持つ者に従う代わりに、自分たちの命や農地・作物を守ってもらう」という約束事が、その瞬間には「必要な枠」だったのかもしれません。
大人は、歴史の教科書を見ながら、子どもにこんな風にパスを出してみてください。
「見てごらん。この不自由なルール、昔はみんなの命を守るために必要だったんだって。でも、時代が変わって平和になったら、このルールはどうなっちゃうと思う?」
子どもは「もう守ってもらう必要がないなら、ただの不公平じゃん!」と気づくはずです。
そう、不自由の原因は、ルールそのものが最初から悪だったのではなく、時代の変化とともに「今の社会に合わなくなってきたこと」にあります。

社会のシーソーを水平にする「イコライザー」

ここで、子どもたちに社会のバランスの変化を伝えるための、とっておきのヒントがあります。公園にある「シーソー」を思い浮かべてみてください。
乗っている二人の体重が同じなら、シーソーはきれいに空中で止まってバランス(均衡)が保たれますよね。でも、どちらか一方が重すぎると、シーソーは地面にギュンと傾いて、動かなくなってしまいます。
大昔の社会も同じでした。最初は「守ってもらう代わりに従う」というバランスが取れていたのに、時代が変わると、権力を持っている側だけがどんどん重くなり、社会のシーソーが不公平に傾いてしまったのです。
そうなったとき、人間たちは黙っていませんでした。
傾いたシーソーをもう一度まっすぐ(イコール)にするために、軽い方に「上乗せするおもり」を投入したのです。このおもりのことを、「イコライザー(均衡を保つもの)」と呼びます。人間の歴史とは、合わなくなった古い枠に対して、先人たちがこの「イコライザー」を投げ込んで、みんなの納得のいく水平な社会に戻そうとしてきた歩みだ、と呼べる面があると思います。
過去の歴史を振り返ると、面白いイコライザーがたくさん見つかります。
「法律(ローマの十二表法など)」というイコライザー: 貴族たちが勝手にルールを決めて社会が傾いたとき、「誰でも読める共通の法律」というおもりを乗せて、みんなの権利をイコライズした。
「選挙(参政権の拡大)」というイコライザー: お金持ちだけが政治を動かして社会が傾いたとき、「すべての人が1票を持つ」というおもりを乗せて、声の大きさをイコライズした。
美術編でピカソが常識を破り、理科編でコペルニクスが天動説を疑ったように、歴史上の人々もまた、映画の主人公のように逞しく、変形した古い枠をバランスのとれた良い形に戻し続けてきたのです。

君なら、このバランスの悪さをどう整える?

社会編第3回の大人の伴走Tipsは、歴史の教科書を「もしも君がこの時代にいたら、どんなイコライザー(おもり)を使ってバランスを整える?」という、当事者の問いに変えることです。
親子で教科書のページをめくり、片方に傾いてしまった古い枠を見つけたら、すかさずパスを出します。
「この時代、社会のシーソーがすごく傾いてみんなが困っているね。君なら、どんな『イコライザー(新しいルール)』を軽い方に乗せて、みんなが納得できる水平な社会にする?」
子どもたちが先人たちのイコライズのドラマをひも解き、「自分ならどう社会のバランスを整えるか」という意志を持つこと。これこそが、家庭で育まれる「未来の社会のクリエイター」の逞しいOSです。
細かい年号の暗記も大切です。でも、年号の暗記が先ではありません。まずは大きな流れを把握しましょう。教室や家庭では、人間たちがみんなの納得を目指してシーソーを水平に戻してきた歴史の体温を、皆で熱く語り合ってみてください!流れが頭に入った後であれば、年号の暗記も、およその見当がついて、ぐっと楽になるはずです。
(社会編・第4回へ続く)

10歳からわかる「まとめ」

歴史(れきし)は、傾(かたむ)いた社会のシーソーを「おもり」でたいらに戻(もど)してきたドラマだ!
【社会編】の第3回は、「歴史(ヒストリー)」の世界へ行くよ!
「歴史の教科書って、むずかしい名前をおぼえるだけでツマラナイ」と思っているみんな、それは大きな間違い!
公園にある「シーソー」を思い浮かべてみて。二人の重さが同じなら、シーソーはまっすぐ空中で止まるよね。でも、どちらか一方が重すぎると、ギュンと下に傾いて動かなくなっちゃう。
昔の社会のルールも同じ。それが作られたときは「みんなの命を守るため」に納得していたルールも、時代が変わると、力のある人たちだけが重くなって、社会のシーソーが不公平に傾いちゃったんだ。
そんなとき、昔の先人(せんじん)たちは立ち上がった!
傾いたシーソーをもう一度まっすぐ(イコール)にするために、軽い方にドスンと「新しいおもり」を乗せたんだ。この、バランスを元に戻すおもりのことを「イコライザー」って呼ぶよ。
昔の人が作った「みんなで守る平等な法律」や、「みんなが持てる選挙の1票」も、ぜんぶ社会をまっすぐにするための大切なイコライザーだったんだね。人間の歴史は、みんなの納得をさがして「イコライザー」を乗せつづけてきた、がんばりの歴史なんだ。
だからみんなも、歴史を学ぶときは、「もしボクが、わたしがこの時代にいたら、どんなイコライザー(おもり)を乗せて社会をまっすぐにするかな?」って、逞(たくま)しく考えてみてね!

*本原稿は、ジェミ兄さんとの対話を基に構成されました。

※この記事では、「歴史」を、「歪んだ枠を整えようと積み重ねた人間の活動の記録」という側面から見て考えてみました。