なぜ「明るい音」と「悲しい音」があるの?

※この記事では、音楽と感情の仕組みについて、少し掘り下げて考えてみます。

ドレミは感情を動かす「魔法のイコライザー」

前回は、リズムが僕たちの身体の奥底にある心臓の鼓動(命のパルス)とシンクロしていることを探究しました。手拍子や足踏みでみんなとビートを合わせる楽しさに目覚めましたね。
さあ、今回のテーマは、音楽の授業で一番不思議に思われている、あの謎です。
「なんで『ドミソ』は明るくて、『ド・ミ♭・ソ』は悲しく聞こえるの?」
学校では「ハ長調(メジャー)は明るくて、イ短調(マイナー)は悲しいものです。覚えましょう」と記号として教えられます。でも、理由もわからずに暗記するなんて、探究学習のOSを搭載した僕たちには物足りませんね。
実は、特定の音の重なり(和音=コード)が、僕たちの心を勝手に「嬉しい!」「切ない…」と動かしてしまうのには、数学と脳科学に基づいた「秘密の魔法(ルール)」が隠されているのです。

明るい音と悲しい音の数学的イコライズ

「ドミソ」と「ド・ミ♭・ソ」。大人はぜひ、お子さんと一緒に、この2つの和音の「波(振動)」の重なりを、初回の知識を思い出して想像してみてください。
前々回、高い音は「細かい波」、低い音は「ゆったりした波」だと学びましたね。
「ドミソ」(メジャーコード・明るい音): 3つの音の「波(周波数)」が、数学的にものすごく綺麗でキリの良い比率(4:5:6)で重なり合っています。脳は、この「完璧に計算された綺麗な調和」を聴くと、勝手に「あ、心地よい! 嬉しい! 明るい!」という幸福ホルモン(ドーパミン)を放出し、明るい感情を生み出すのです。
「ド・ミ♭・ソ」(マイナーコード・悲しい音): この完璧な比率が、真ん中の音(ミ♭)によってほんの少しだけズレて、複雑な重なり方(比率がキリ悪くなる)になります。脳は、この「少しだけ計算からズレた複雑な重なり(不協和)」を聴くと、心地よい中にも「あ、少し不安だ… 切ない… 悲しい…」という複雑な感情を呼び起こすのです。
音楽の和音(コード)とは、ドレミの音を使って、人間の脳が「明るさ」や「悲しさ」を感じる比率へと、物理的な波を書き換える魔法の数式なのです。

心がハラハラ・ドキドキする「音の冒険ストーリー」

さらに面白いのは、この和音を順番に並べ替える(コード進行)だけで、僕たちの感情をまるでジェットコースターのように自由自在に揺さぶることができる点です。
音楽の世界には、僕たちの心を動かす「3つの魔法の役柄(コードの機能)」があります。少し難しい大人の言葉ですが、「おうちと冒険のストーリー」で考えるとよく分かります。
トニック(おうちの音・安心):
自分の「お家(ホーム)」にいるときのような、完璧に落ち着いた安心の音です(例:ドミソ)。「あぁ、やっぱり我が家が一番落ち着くなあ」という、シーソーが水平に保たれた状態です。
サブドミナント(お散歩の音・ちょっぴりワクワク):
お家を出て、近所の公園へ「お散歩」に出かけたときのような、少し動きのある音です(例:ファラド)。「何か面白いことないかな?」と、心が少しだけソワソワし始めます。
ドミナント(大冒険の音・ハラハラドキドキ!):
お家から遠く離れた「危険なジャングルや竜の住む城」にたどり着いたときのような、一番不安定でハラハラする音です(例:シレソ)。シーソーが大きく傾き、脳は「うわっ、浮き上がった! 早くお家に帰りたい!」と強烈な緊張感を感じます。
音楽をつくる人(作曲家)は、この3つの役柄を巧みに組み合わせます。
「トニック(おうち)」→「サブドミナント(お散歩)」→「ドミナント(大冒険でハラハラ!)」
と音を響かせ、僕たちの心をギリギリまでハラハラさせておいてから……最後にドスン!と「トニック(ただいま!我が家。)」へ戻すのです。
この瞬間、僕たちの心は「あ〜〜!! 無事にお家に帰ってこられた〜!!」と、強烈な安心感(解決)を感じて、涙を流したり感動したりするのです。映画音楽もアニメの曲も、みんなこの「音の冒険ストーリー」を使って、僕たちの感情をコントロールしているといえるのです。

今の君の感情は、どんなドレミの波?

音楽編第3回の大人の伴走Tipsは、音を技術ではなく「自分の感情を書き換えるツール」として捉え直す問いを投げることです。
お家に帰ってきたら、自分の今の心のシーソー(傾き)を感じながら、最後のパスを投げます。
「前回のリズムの探究を経て、みんなのビートがシンクロする楽しさを知ったね。じゃあ、今の君の心は『おうち(トニック)』で落ち着いている? それとも『大冒険(ドミナント)』みたいにハラハラドキドキしている? もし今の君のその感情を、ドレミの魔法(コード)を使って『音のストーリー』にするなら、どんな順番で音を叩いてみたい?」
「いまワクワクしているから、大冒険の音(ドミナント)から始めて、みんなを驚かせちゃう!」
「少し寂しい気持ちだから、悲しい音から始めて、最後はあたたかい『お家(トニック)』に帰ってくる曲を作る!」
楽譜通りに演奏できなくても大丈夫。自分の心のイコライザーを調整するように、音のストーリーを組み立ててみましょう。
探究学習の【音楽編】は、この心のサイエンスを経て、次は「なぜ音楽が時代を超えて、人々の声を届ける言葉(歴史)になったのか?」という、社会とカルチャーの謎解きへと向かいます!
(【音楽編】第4回へ続く)

【補足】おうちで試せるGoogleの無料ツール

『Chrome Music Lab』の中にある『Chords(コード)』という実験ツールを開いてみてください。画面上の鍵盤(けんばん)を一回タップするだけで、その音を主役にした完璧な「明るい和音(メジャー)」か「悲しい和音(マイナー)」を一瞬で奏でることができます。「音を重ねるだけで、感情がこんなに変わるんだ!」と、音の魔法を直感的に体験するのにぴったりです。
URL: https://musiclab.chromeexperiments.com/Chords/

10歳からわかる「まとめ」

ドレミは、キミの心を大冒険(だいぼうけん)に連れていく「感情のローラーコースター」だ!
【音楽編】の第3回だよ!
ピアノで「ドミソ」を弾くと明るくて、「ド・ミ♭・ソ」を弾くと悲しく聞こえるの、知ってる?
「なんで、音を重ねるだけで、心が明るくなったり悲しくなったりするんだろう?」
その秘密は、音の「波(しんどう)」の重なり方と「おうちと冒険(ぼうけん)のストーリー」にあるんだ!
明るい音(ドミソ): 3つの音の波が、数学的に完璧(かんぺき)に綺麗(きれい)に重なり合っている! 脳は「あ、心地よい!」って明るい気持ちになるんだ。
悲しい音(ド・ミ♭・ソ): 完璧な重なりがほんの少しズレて、複雑(ふくざつ)な重なり方になる。脳は「あ、少し不安だな… 切ないな…」と感じるんだよ。
さらに、音楽には3つの「魔法の役柄(やくがら)」があるよ!
トニック(おうちの音): 我が家にいるみたいな、ホッとする安心の音。
サブドミナント(お散歩の音): 近所へお散歩に出かけたような、ちょっとソワソワする音。
ドミナント(大冒険の音): 怪物(かいぶつ)のいるお城に着いたみたいな、ハラハラドキドキする音!
曲を作るときは、この音を使って「お散歩」から「大冒険」へみんなを連れていき、ハラハラさせてから……最後に「ただいま!(おうちの音)」へ戻すんだ。
すると心は「あ〜! 無事に帰ってこられた〜!」って、ものすごく感動しちゃうんだよ。
キミの心の中にある「嬉しい!」「ハラハラする!」「ホッとする」っていう色んな感情。
ドレミの冒険ストーリーを使って、今のキミの心を音にして放ってみよう!

*本原稿は、ジェミ兄さんとの対話を基に構成されました。

※この記事では、音楽と感情の仕組みについて、少し掘り下げて考えてみました。