意外と知らない!インターネット検索の賢いやり方

エビデンスの収集、まずは検索

今回から3回にわたり、インターネットを活用したエビデンスの収集について触れていきます。昨今、ChatGPTをはじめとする生成AIを巡る議論が日々活発に行われています。生成AIは問いかけに対しスラスラ答えてきます。相談事に対するアドバイスにはなるほどと思わせる回答もあり、タイピングのような動きと合わせ見ていて感心してしまいます。
ついつい言葉のすべてを真に受けて信じてしまいそうにもなりますが、事実確認の問いかけにはデタラメを挟んでくることがあります。私は無料版しか試していませんが、今のところそのデタラメ具合がわかりやすいため騙されずに済んでいるはずです。しかし、今後はどうなるでしょうか。騙し具合が巧妙になると見破れなくなるかもしれません。

安全策として、これまで通りのいわゆる「インターネット検索」との併用を考えるのが良さそうです。

検索で注意すべきこと

インターネットでの情報検索は、一見、誰でも簡単に使いこなせるように見えます。しかし、適切な活用にはクリティカル・シンキングの姿勢が欠かせません。

クリティカル・シンキングについては前回の読者交流会でも軽く紹介しました。教育学者ロバート・エニスによる1987年の定義によると「何を信じるか、もしくは何をすべきかについて決定することに焦点をあわせた、合理的で内省的な思考」のことです。
その概念を特徴づけるキーワードは3つで、先の定義に記されている合理性(論理性)と反省性(省察性)に、批判性(懐疑性)が加わります。最後の批判性がクリティカルの直接的な訳語になりますが、意味するところは、相手の否定・非難・糾弾という一般的に連想する言葉ではなく、「偏見を持たない吟味・評価」です。インターネット上の情報には、懐疑的に接する態度が求められるのです。

なぜ懐疑的に接する必要があるかといえば、インターネット空間は図書館ではないからです。図書館には選定された本や資料が並んでいると考えて構わないでしょう。一方、インターネット空間には、図書館の本や資料に該当する情報もありますが、それに加えて、大勢の人による意見の表明や議論も存在します。インターネット空間は、世論が形成されるコミュニケーションの場という側面が強いのです。しかも、その世論は、インターネットの特性によりバイアスを増幅した形で表明される可能性があります。インターネットの特性とは、そこから入手できる情報量が他のメディアに比べても圧倒的に多いことと、一つひとつの情報の確実性や信頼性が担保されていないことに集約されます。

検索で必要なのは「ふるいがけ」

インターネット上の情報はマユツバモノと考えるべきだと指摘しているわけですが、それを前提とすれば対処は可能です。デマやいわゆるフェイクニュースを避け、信用できる情報にたどり着くためには、無闇に検索するのではなく、「ふるいがけ」をまず行う意識が大切です。
ふるいにかける基準は大きく二つで、「発信元の信頼性」と「いつの情報か」です。発信元の信頼性については、知名度の高いところかどうか、平たく言えば大手かどうか程度の感覚的なもので最初は構いません。記事等を読み進める中で「○○研究所の調べによると」などの記載で発信者が参照している先があることがわかった場合には、その参照元も直接当たるようにします。このようにして、一般には知られていないがその分野では権威ある情報源に行き着くことができます。同時に、大元の情報すなわち「一次情報を確かめる」ことを常に意識することも大切です。

いつの情報かについては、一般的には新しければ新しいほど最新の知見が反映されていると考えられますが、何かの事件について調べるような場合には、事件発生当時の記事にこそ詳細が触れられていることもあります。状況に応じて使い分けてください。

Google検索「ツール」ボタンの活用

「いつの情報か」についての検索で、知っておくと便利なのが「ツール」ボタンの活用です。

Google検索で、検索窓に言葉を入れて検索結果が表示された後、同時に表示される「すべて」から始まる1行を見てください。その右に「画像」「ニュース」などと続く1行です。その右端に「ツール」があります。この「ツール」をクリックすると、先ほどの1行の下に「すべての言語」「期間指定なし」「すべての結果」と書かれた新たな行が現れます。ここでさらに「期間指定なし」をクリックすると、縦に期間の選択肢が並んだボックスが現れます。ここで検索の期間を指定することができるのです。

ちなみに一番下の「期間を指定」をクリックするとカレンダーが現れます。いつからいつまでの過去の月日を自分の好みで設定でき、欲しい情報にたどり着くまでの時間を短縮できるはずです。

「発信元の信頼性」に関するTips

玉石混淆のインターネット上の情報を、「発信元の信頼性」によってふるいにかけようとする場合、方法の一つに「ドメイン指定」があります。先ほどの関東の線状降水帯に関して、政府からの発信に限定して見たい場合、「site: go.jp」を検索窓に加えます。go は、government(政府の意)の短縮で、これによって検索するサイトが限定されます。加えて、この場合には検索期間を「1週間以内」として試しました。

結果に表示されたのは2種類で、Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism (国土交通省)からの発信と、Japan Meteorological Agency(気象庁)からの発信情報に限定することができました。

他には、検索サイト自体を専用のものに変えて検索するというやり方があります。代表的なものが論文検索サイトの活用です。インターネット上の情報が玉石混淆になるのは誰でも発信・掲載が可能だからです。しかし、論文となると査読を受けたものしか掲載されないはずと考えられます。日本で無償利用できる論文検索サイトには下記があります。

Google Scholar(グーグルスカラー)

CiNii Research(サイニー、国立情報学研究所)

検索結果の論文のダウンロードは無償でできる場合も有償の場合もあります。全文ダウンロードは有償でも、要旨だけは無償というものもありますので、用途に応じて使い分けてください。
他には、NDL Search(国立国会図書館サーチ)があります。こちらは国会図書館で管理されている資料全てが検索対象です。論文だけではなく一般書籍なども探せます。

NDL Search(国立国会図書館サーチ)

なお、インターネット検索については、拙著『エビデンス仕事術』の中では第2章で集中的に取り上げています。参考にしてください。

10歳からわかる「まとめ」

・エビデンスを探そうとする時、インターネットの活用がまず頭に浮かぶだろう。インターネットは便利だが、利用に際しては注意が必要
・誰でも発信できることがインターネットの特徴。悪気がなくても、確かでない情報が載ってしまっている可能性がある
・情報源の確かさ、いつの情報か(情報が古くなっていないか)、をまず確認しよう
・情報源を政府系の機関に絞り込んだり、掲載時期を限定したりする方法を覚えよう
・研究論文に絞って検索する方法もある。目的に応じて様々な検索サイトを使いこなそう

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