信頼できるデータ、公的統計の活用法

公的統計の活用をしよう

前回、インターネット上の情報はマユツバモノとして捉え、しっかり吟味すべきだという話をしました。とはいえ、全てを疑っていたのでは疲れてしまいます。公的統計については信用できると考えたいものです。

第18回「意外と知らない!インターネット検索の賢いやり方」

しかし、記憶に新しいところでも2018年厚生労働省、2021年国土交通省のいわゆる統計不正問題が明るみに出ました。特に国交省の数値書き換えと二重計上問題は、先の厚労省による不正を受け各省庁の統計を一斉に点検した後になって明るみに出た問題とあって、私をはじめ統計に日頃接する者の間には衝撃が走ったものです。

一方で、統計担当者の多くが実直な業務推進者であることも同時に知っている者としては、再発防止策が残りの極一部の職員による不正を排除し、多数の担当者および国家機関の汚名返上に繋がってくれることを願わずにはいられません。それを期待しつつ、公的統計データの収集と活用について、主なところを下記に紹介します。

まずは、総務省統計局のサイトへ

公的統計データをインターネット検索で探そうとする際には、何はともあれ「総務省統計局」のサイト (https://www.stat.go.jp/) へ行きます。

ホームには、左から「最新の公表データ」「最新のお知らせ」「新着情報」と並んでいるのがわかります。下の方にスクロールすると「統計調査・統計データを探す、調べる」という大項目が見つかり、直下の中項目「総務省統計局の統計データを探す」の中には「1 国勢調査」から「20 経済構造実態調査」まで、調査毎に資料が並んでいます。

もう一つの中項目は「他の機関の統計を含めて探す」で、最上段の「e-Stat」(全ての政府統計を収録した統計ポータルサイト)がなかなか便利ですので、是非これを使いこなせるようにしてください。ポータルサイトと銘打っていますのでそこへのダイレクトURL (https://www.e-stat.go.jp/) をブックマークしてしまうのも良いでしょう。

その他、この下に並ぶ「統計ダッシュボード」(主な統計データを視覚的に分かりやすく提供するWebサイト)も便利ですし、小学生中学生には「キッズすたっと」(教科書にある言葉で簡単に検索|小中学生向けWebサイト)で統計に慣れることをお勧めします。

「e-Stat」を使いこなす

先ほどの「e-Stat」で何が出来るか事例を使って説明しましょう。

ホームに行くと「統計データを探す」という項目がまず目に入ります。「すべて」「分野」「組織」と書かれた四角いタイルがありますが、その下の「キーワード検索」が便利ですので、そこに思い付く単語を入れます。

今回、私は、出身地・福井の羊羹事情について裏付けデータを取得しようと考えました。福井は水羊羹の種類が多く、しかもそれを冬によく食べます。というより、福井では、水羊羹は夏ではなく冬場に食べるものなのです。毎年11月から3月までが販売期間です。以前は「冬はこたつでみかんと水羊羹」と韻を踏んだセリフをよく耳にしました。

そこで、キーワード検索に「ようかん」と入れてみました。検索に引っ掛けたかった調査は、家計の品目別支出額がわかる「家計調査」です。ところが、あいにく「ようかん」や「羊羹」では家計調査がリストアップされませんでした。ちなみに、「アイスクリーム」という検索ワードでは家計調査がリストアップされましたので、「ようかん」がマイナーすぎたのかもしれません。

そこで「家計調査」をまずキーワード検索に入れ、その後で最後に「ようかん」で絞り込むよう作戦を変更しました。

絞り込みは、「期間」と「都市」

今回の目的は、一年間の月別に各家庭の羊羹消費金額を調べ、それを福井とどこか別の都市とを比較することです。したがって、最初に「家計調査」で絞り込んだあとは、提供周期での絞込みで「月次」を選び、公開年月での絞込みでは最新の「2023年6月」を選び、また表章分類での絞込みで「金額」を選びました。

これらの絞込みは全て、画面左側に縦に並んだ項目リスト上で行います。それら絞込みの様子は、画面上部の「選択条件」のところで確認できます。最後に、「選択条件」の一つ下の行中央に青枠で示された「データセット」のところに「ようかん」と入れて絞込みを完成させました。

その次に行うことは、いよいよ、対象のデータの入手です。画面中央右の「表示・ダウンロード」のところで「DB」ボタンを押します。すると、ページが変わり、「地域区分」の選択肢が現れ、そこではプルダウンリストから都市が選べます。今回は、福井市の他に「全国」と「東京都区部」を比較対象として選びました。

ダウンロードされた数値を並べて比較する

今回、一年間の12ヶ月は、2022年4月から2023年3月までとしました。それは、水羊羹の販売が毎年冬の終わりの3月末までだからです。2022年の1-12月で見るより、季節の区切りという意味で合理的だと判断しました。

さて、果たして結果はどうだったでしょうか。一言で言えば、予想が正しかったことが証明されました。全国をベースにした統計では、羊羹の消費金額は8月が最も高く、次が7月そして6月と続きます。明らかに夏の消費量が高く、12月はそれに続く程度です。東京都区部でも夏季に当たる7月の消費金額が最も高く、12月はその次です。

一方、福井では、最も消費金額が多い月が12月で次に1月、2月と続きます。しかも12月は別格で、この単月だけで年間消費金額全体の40%超に相当する額(1,353円に対して、556円)を消費しています。福井では羊羹は明らかに冬の食べ物です。また、この冬の消費における大きな差のため、福井の年間消費額は全国(711円)の倍近いものとなっています。

10歳からわかる「まとめ」

・公的統計データをうまく使いこなそう
・教科書にある言葉で簡単に検索できる小中学生向けのWebサイトとして「キッズすたっと」もある
・「e-Stat」を活用すると条件による絞込みができる。必要な期間や地域だけのデータをダウンロードできるので、比較に活用することも手早く手軽に行える

【旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン2023年7月5日公式掲載原稿 現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/)】

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