
対面はオンサイト
コロナ禍下、Zoom Meetingをはじめとするオンラインでのミーティングが増え始めていた時、私の頭の中はまだ「対面に勝るものはない」「今は致し方なくオンラインで代用している」という考えでした。そのため、対面を指す言葉としてオフラインを使用することにはどうしても馴染めず、現場(site)で、という意味合いのオンサイトの使用を主張していました。
「オン」感覚という点では
ところが、最近は対面より「対画面」の方が「オンだな」と感じることが増えて来ています。高校生との、人生相談とも呼び得る「探究対話」においては、話を聞きながら見せたくなるものがどんどんと出てきます。例えば、進学先の大学選定に迷いがある生徒には、希望する大学のホームページをその場で一緒に見ながら話をします。志望学部・専攻は決まっているものの、どの大学を受験したらいいかを悩んでいる生徒には、researchmap を一緒に見ながら、「経営」というだけだとこんなに教授がいるよ、と話をします。各教授の専門分野は何か、一つひとつ一緒に確認しながら、経営の中でも何を特に勉強してみたいのと質問し、どの教授のゼミに興味を感じるかを話し合います。目標大学がはっきりしている生徒とは、その大学の入学者選抜方式について一緒に確認し、どの方式が自分に一番合っていそうかを話し合います。時には過去問も確認しながら、どういう対策が必要かを議論し合います。
将来、自分でこういう商売をしてみたいという生徒とは、現在、その分野で大躍進を遂げている企業に関する情報を一緒に眺めます。自身のアイデアを具体化しようとするなら事業計画書を書き始めてみるといいよと話しながら、例えば、日本政策金融公庫のページを開きます。そこにある「創業計画書」とその記入例を見ながら、この程度は考えておかないとお金を借りることは難しいよ、と話します。
便利アプリを開発しようと格闘している小学生には、アイデアがおよそまとまりつつある段階で、既に存在するアプリを見せながら、「これとはどうやって差をつけようか」などと話します。
もちろん、このような提示は対面で話をする時にも行えます。横に並んで座り、お互いの間の距離に気を配りながら、同じ方向を見ればいいだけです。画面を動かそうとする際にやや窮屈になりますからマウスは必須です。今、冗談のように書きましたが、ある学校を訪問した際、アドバイスを始める前の注意事項を、呼ばれた数名のアドバイザーで一緒に確認する中で、副校長から「生徒の身体には絶対に触らないでください」と強く言われたことが印象に残っているからです。こんな心配もオンラインでは必要ありません。しかも、チャット等でURLをシェアし合えば、お互いが同じサイトの別々のページを開きながら、よりスピーディに必要な情報を見つけ合うことも出来てしまいます。
【参考】researchmap 国立研究開発法人科学技術振興機構
さらにAI搭載により
さらに、こちらの方が「オン」だと思わせるきっかけになったのは、昨今、急激に進化した汎用AIの活用です。学生や先生との対話に外国人が混ざってきた経験は今までないため、ここでは翻訳機能を活用したことはありません。大助かりと感じるのは要約機能です。
外資系企業を何社か経験した私が気付いたことは、どの企業にもミーティングミニッツ作成の天才がいることです。参加者はもちろん当日欠席の関係者にも、わかりやすく、重要項目の抜け漏れなく、素早くミーティングメモを作成し配布することは、実は誰にでも簡単にできることではありません。日本企業の中には書記係を会議に参加させているところがあるのを見たことがありますが、外資系企業でそれは経験がありません。参加者の誰かがその役を受け持つのですが、その人も議論には積極的に参加します。従って、ミニッツ作成には会議終了後に取り掛かることになります。AIとの決定的な違いは、ここです。
私が普段利用するオンラインミーティングツールはZoomですが、ZoomのAI Companionを活用すると、ミーティング終了後数分以内に、ホスト宛に会議要約が送付されてきます。それを確認し、問題がなければ参加者等に送付します。この作業に10分以上を要したことはこれまでありません。確認する主なポイントは固有名詞の漢字の間違いや、その人への敬称の統一です。また、さほど重要ではないことが書かれている場合には、その項目を削除することです。固有名詞の漢字間違い等が発生するのは参加者以外の名前についてのみです。参加者の名前は、ミーティング参加時に使用するものがそのまま転記されます。私はいつもカタカナで名前を表記しますので、要約内ではその通り記載されて出てきます。
便利なのは「簡単な要約です。」の次に書かれる「次のステップです。」の項目です。参加者各人が行うべきタスクが書かれていますので、会議後の各人のアクションが明確になります。もちろん、ここは間違いがないかきちんと確認します。
ミニッツの送付は非常に簡単です。私の場合は、通常、関係者全てに会議招集をかけるようにしていますので、参加・不参加を問わず、招集をかけた全員(Meeting invitees)を選択すれば、すぐに必要な人に送付されることになります。
Zoom チームチャットとチャネル
さらに、私の場合、通常頻繁に情報共有する必要のある人とはZoomのチームチャットを活用しています。該当者を開設した「チャネル」に招待していますので、そこに、シェアする情報や会議予定が載ります。資料ファイルも、そこでの共有およびDM利用の添付送信でやり取りをしています。その際、便利なのは、比較的重いファイルでも簡単にシェアできてしまうことです。公立の学校の場合、メール回線が細いことが多々ありますが、そんな場合でも気にせず、代替手段を検討する必要もなく作業できてしまうことで、業務の効率化が実現できていると感じます。
オンライン縁側
ちなみに、このチャネルを「オンライン縁側」と称しています。福井県坂井市の小中学校の教師に日向ぼっこがてら駄弁りにきてもらいたいと考えたからです。このオンライン上に開設した縁側で、例えば、一学年にひとクラスずつしかない学校の先生達同士で、同じ学年の活動計画などを相談してもらえたらと願っています。
10歳からわかる「まとめ」
・かつては、対面実施に勝るミーティングはないと考えていた
・コロナ禍下で利用が始まったオンラインミーティングには、現在、慣れも相まって、オンラインでこそ容易にできる利用も取り入れられてきている
・そこにAI活用が加わり、さらに便利さが増している

ジャートム株式会社 代表取締役
学校・企業・自治体、あらゆる人と組織の探究実践をサポート。
Inquiring Mind Saves the Planet. 探究心が地球を救う。