音楽は言葉をも超えうる「手紙」

※この記事では、音楽が果たした役割について歴史を振り返り、今の社会も見つめます。

音楽は時代を動かす「生きた言葉」

前回は、ドレミの魔法(和音=コード)が、僕たちの脳を勝手に「ハラハラ・ドキドキ」させる数学的な仕組みであることを探究しました。心のローラーコースターを自由自在に操る魔法を手に入れましたね。
さあ、今回のテーマは、その手に入れた「感情の波」が、なぜ社会や歴史という大きな枠を動かす最強の言葉になったのか、その謎に迫りましょう。
学校の授業で「バッハは◯◯時代、ベートーヴェンは◯◯派」と暗記するだけでは、探究学習のOSを搭載した君たちには物足りないはずです。実は、音楽とは、大昔から「言葉を超えた手紙」として、人間の声、そして時代の想いをイコライズ(整える)するために使われてきた、最強のコミュニケーションツールだったのです。

「歌」にすれば、想いを忘れられることはない

「なんで、大昔の人はわざわざ歌で出来事や感情を伝えたんだろう?」
大人はぜひ、お子さんと一緒に、Google Arts & Cultureなどのサイトを使って、大昔の楽譜や、言葉を持たない民族の音楽を想像してみてください。
何百年も大昔の世界。今のように、誰もが文字を読めたり、インターネットがあったりしたわけではありません。大切な歴史や、誰かへの愛、そして神様への祈り。その想いは、ただの「話し言葉」だけでは、時間が経つと忘れられ、遠い場所には届きません。
そこで人間が使った「魔法」が、第1回で学んだ「波(振動)」と第2回で学んだ「リズム」です。
文字は読めなくても、美しいメロディ(波)と心地よいリズムに乗せた「歌(節)」は、誰の心にもスッと入り込み、忘れられにくい。だからこそ音楽は、言葉の壁を飛び越えて、大切な情報を後世に伝える「生きている情報の伝え手」として、歴史を作り上げてきたのです。

差別や不公正に対して声を上げる民衆の「武器」

さらに時代が進むと、音楽は社会の傾きを水平(納得)に戻すための武器へと進化しました。
【社会編】で、みんなが納得できる社会のイコライザーを作るお話をしましたね。でも、社会のシーソーが大きく傾き、差別や不公正に苦しんでいる人たちがいます。
そんな時、言葉だけで「不平等だ!」と訴えても、権力を持つ人たちには無視されることがあります。
そこで人間が使った「バランスをとるためのおもり」が、第3回で学んだ「ハラハラドキドキさせる感情のコード進行」です。
アフリカから連れてこられた人たちが奏でたジャズやブルース、社会への不満を叩きつけたロックやヒップホップ。彼らは、自分たちの怒りや悲しみを、脳を強烈に揺さぶる「コード(和音)」と「リズム」に乗せて解き放ちました。その音楽は、言葉よりも早く、遠くの人たちの脳へと届き、「あ、これは彼らの心の叫びだ。社会が傾いている」と、人々の感情を同期させ、解決に向けて社会を動かす力となったのです。

「芸術」としての完成。「合奏のパワー」

一方で、音楽は民衆の声を届けるところから、「芸術」として完成させる方向へも分かれていきました。バッハやベートーヴェンのような作曲家たちは、音の物理学(波・振動)と数学を極限まで究め、圧倒的な美しさで世界を描き出す「美のイコライザー」を作り上げたのです!
その力の源こそが、異なる声や楽器の音が集まって、ひとつの壮大な調和を生み出す「合奏(アンサンブル)」のパワーです!
合奏のパワー(オーケストラ):
たった一つの楽器では、感情を動かすコード(和音)の厚みや、雷鳴のような強烈な迫力を生み出すことはできません。バイオリン、フルート、トランペット、ドラム——全く違う「個性(波長)」を持った何十人もの楽器が、完璧なルール(コード)のもとでひとつに重なり合った瞬間、たった一人の人間の脳を強烈に揺さぶる、圧倒的な音のイコライザーが誕生するのです。
歌と楽器の掛け合い(合唱と演奏の合体):
さらに面白いのは、民衆の声である「歌(歌唱)」と、圧倒的な迫力を持つ「楽器(演奏)」が掛け合わさる時です。ベートーヴェンの「第九」のように、数百人のオーケストラの合奏のパワーに、さらに数百人の民衆の合唱の声がドスン!と重なり合った時。音楽の力は限界を超え、世界中の人々の感情をひとつに溶け合わせる、壮大なアンサンブルとなります。
音楽は、ただ綺麗に演奏する技術ではありません。時代を超えて、民衆の声(パワー)、そして多様な音がひとつになる美しさ(アンサンブル)を届ける、最強の言葉なのです。

君の想いは、どんな音の手紙になる?

音楽編第4回の大人の伴走Tipsは、音を技術ではなく「自分の想いを届ける言葉」として捉え直す問いを投げることです。
自分の手に入れた心の魔法(コード)を思い浮かべながら、最後のパスを投げます。
「第3回のリズムと感情の探究を経て、みんなの心がシンクロする楽しさを知ったね。じゃあ、今の君の心のシーソーは、嬉しい方に傾いている? それとも、少し寂しい方に傾いている? もし君が、その感情を、大昔の人々のように『言葉を超えた音の手紙』として世界中に届けるとしたら、どんな音を重ねて、どんなリズムで叩き出してみたい? そして、それは君の声(歌)? それとも、みんなで奏でる迫力(合奏)?」
「いま、ワクワクしている気持ちを、みんなの声(歌)で爆発させて、最後はみんなの楽器の合奏(演奏)でドスン!と合わせる最強のアンサンブルを作る!」
「少し寂しい気持ちを、一人の悲しい歌から始めて、最後は世界中の楽器が集まるオーケストラの合奏で包み込んで、世界中の人を泣かせちゃう!」
楽譜通りに演奏できなくても大丈夫。自分の想いを届けるイコライザーを調整するように、音の手紙を組み立ててみる。
探究学習の【音楽編】は、この社会と歴史のサイエンスを経て、次は「街の雑音(ノイズ)も音楽になる!?」という、環境デザインとアートの謎解きへと向かいます!
(【音楽編】第5回へ続く)

10歳からわかる「まとめ」

おんがくは、キミの声を世界中に届ける「最強のコトバ(生きている手紙)」だ!
【音楽編】の第4回だよ!
音楽の授業で「バッハは◯◯派、ベートーヴェンは◯◯派」とおぼえるの、知ってる?
でもね、キミの冒険はそんな暗記じゃない!
音楽は、大昔から「言葉(ことば)を超えた生きている手紙」として、人々の声を世界中に届けてきた、最強の言葉なんだよ。
大昔の世界。文字(もじ)が読めなくても、美しいメロディ(波)と心地(ここち)よいリズムに乗せた「歌」は、忘れられにくくて、誰の心にもスッと届く。だから、音楽は、大切な出来事や愛(あい)を伝える情報のイコライザーとして歴史(れきし)を作ってきたんだ。
さらに時代が進むと、差別(さべつ)や不公正(ふこうせい)に苦しんでいる人たちが、自分たちの怒りや悲しみを、脳(のう)をハラハラドキドキさせる「コード(和音)」と「リズム」に乗せて解き放ったんだ。
でもね、音楽のすごいところはそれだけじゃない! 違う個性(波長)を持った楽器や声が集まって、ひとつの大きな調和(アンサンブル)を生み出す「合奏(がっそう)」のパワーだ。
異なる音が完璧(かんぺき)なルールのもとでひとつに重なり合った(合奏)瞬間、キミの脳を強烈に揺さぶる、圧倒的な音のイコライザーが誕生するんだよ。
キミの心の中にある「嬉しい!」「ハラハラする!」っていう想い。
キミだけの音の手紙を使って、今のキミの声を音にして放ってみよう!

【おうちで試せるGoogleの無料ツール】
Google Arts & Cultureの中にある『Experiments(実験プログラム)』を開いてみてください。大昔の楽譜(がくふ)や、異なるカルチャーの音楽が視覚化(しかくか)される不思議なデジタルツールに触(ふ)れることができます。「文字がなくても、音でこんなに想いが伝わるんだ!」と、言葉を超えたコミュニケーションを直感的に体験するのにぴったりです。
(URL: https://artsandculture.google.com/experiments )

*本原稿は、ジェミ兄さんとの対話を基に構成されました。

※この記事では、音楽が果たした役割について歴史を振り返り、今の社会も見つめました。