人間はなぜノリノリになっちゃうの?

※この記事では、音楽のビートについて、少し掘り下げて考えてみます。

ドラムの音が聞こえると、身体が勝手に動き出す不思議

第1回では、音が空気を伝わる「見えない波(振動)」であることを探究しましたね。さあ、第2回のテーマは、その「波」が僕たちの身体に届いたときに起こる、とっても不思議な現象——「リズムと身体の謎」です!
運動会で太鼓の「ドンドン!」という音が鳴ったとき。
あるいは、お気に入りの曲のドラムが流れ出したとき。
理由もないのに、思わず足でトントンと拍子をとったり、首を振ったり、体が勝手にノリノリになってしまった体験はありませんか?
「ちゃんと座っていなさい!」とお説教されても、なぜか止められないこのノリノリ。
実はこれ、君がふざけているからではありません。人間という生き物の体に、生まれつき刻まれている『命のルール』が反応しているからなのです。

原点は、お腹の中で聞いた「心臓のドクンドクン」

「なんで人間は、一定のリズム(パルス)を聞くと身体が動いちゃうんだろう?」
大人の皆さんも子どもの皆さんも、一緒に、胸にそっと手を当ててみてください。
ドクン、ドクン、ドクン……。
そう、わたしたちの胸の中では、生まれる前から今この瞬間まで、一度も休むことなく「心臓」が一定のリズムを刻み続けています。
人間は全員、お母さんのお腹の中にいた十ヶ月間、この「心臓の拍動(はくどう)」をずーっと聞いて育ちました。
だから、太鼓やドラムのようなPercussion (パーカッション=打楽器) の「ドンドン」という重低音を聞くと、脳と体が「あ! 生きているリズムだ」と反応して、心拍数や筋肉がそのテンポに自動的に同期(シンクロ)してしまうのです。
リズムとは、楽譜の上の記号ではありません。「人間が生きていることそのものの証明」なのです。

ノリノリを飛び越える!? バリ島の「ガムラン」とトランスの秘密

さらに面白いことに、この「リズムへのシンクロ」が極限まで高まると、人間は「ノリノリ」を通り越した不思議なゾーン(トランス状態)に入ることがあります。
たとえば、インドネシアのバリ島で古くから演奏されている伝統音楽「ガムラン」や、何十人もの人が「チャッ、チャッ!」と声を合わせる「ケチャ」が有名です。
打楽器や人間の声を大空の下で高速で打ち鳴らし、その複雑なリズムの波を全身で浴び続けると、演奏する人も聴いている人も、脳の波(脳波)が完璧にひとつになり、まるで自分と周りの人との境目がなくなってしまうような、夢心地の深い集中状態(トランス)に入ってしまうのです。
大昔の人たちは、この「リズムが起こす魔法」を使って、神様と繋がったり、仲間同士の絆を限界まで強めたりしてきました。
【社会編】で、みんなで意見を持ち寄って「叩き台(原案)」を叩き合うDiscussion (ディスカッション) のお話をしましたね。
言葉を使った話し合い(ディスカッション)は、時として国や考え方の違いでぶつかることがあります。
しかし、身体を使った叩き合い(パーカッション・リズム)は、言葉を一切使いません。ガムランのように、同じビート(拍子)を共有した瞬間、見知らぬ人同士でも一瞬で心が重なり合い、ひとつになれるのです。
つまり、リズムとは「言葉の壁を飛び越えて、人と人が一瞬で納得(水平化)し合える、地球上で一番古いコミュニケーション(イコライザー)」なのです。
子どもたち3人が、手を叩いたり(手拍子)、机をトントン叩いたりしながら「あ! テンポを合わせると、自分の身体までひとつに溶けていくみたい」と発見していく。これこそが、音楽を身をもって探究する瞬間なのかもしれません。

君だけの「ノリノリのリズム」を発見しよう!

音楽編第2回の大人の伴走Tipsは、自分の身体の中にあるリズムに目を向けさせる問いを投げることです。
静かな部屋の中で落ち着いたところで、心臓の音を確かめながら、最後のパスを投げます。
「走ったあとのドキドキ(早いリズム)と、寝る前のゆったりしたドキドキ(遅いリズム)。バリ島のガムランみたいに、もし君がみんなを一瞬でひとつにしちゃう『魔法のリズム(パルス)』を叩き出すとしたら、どんなテンポで机を叩いてみる?」
「手拍子と足踏みを組み合わせて、誰も聞いたことがない『ウキウキ・ビート』を作る!」
「自分の心臓のテンポに合わせて、お兄ちゃんと手拍子の合奏(アンサンブル)をしてみる!」
楽譜通りに演奏できなくても大丈夫。自分の命のリズムを感じ、誰かとそのビートを響かせ合う。
探究学習の【音楽編】は、この身体と心の不思議なサイエンスを経て、次は「なぜドレミの音で悲しくなったり嬉しくなったりするのか?」という、感情とコード(和音)の謎解きへと向かいます!
(【音楽編】第3回へ続く)

【補足】「トランス」と「ゾーン」、そして便利サイトの紹介

音楽や儀式における「トランス(Trance)」とよく似たものに、スポーツの「ゾーン(Zone / フロー状態)」があります。「極限まで集中が高まった脳と身体の状態」という意味では非常に近い兄弟(親戚)のような現象です。しかし、「意識のコントロール(自分という主体の感覚)」において、決定的な違いがあります。このあたりについては、次の【体育編】で詳しく触れてみたいと思っています。

自宅や学校で試せるGoogleの無料ツールを紹介します。『Chrome Music Lab』の中にある『Rhythm (リズム)』という実験ツールを開いてみてください。可愛いモンスターたちが画面に登場し、マス目をタップするだけで、太鼓やシンバルを組み合わせたカッコいいリズムパターンを直感的に作ることができます。「拍を組み合わせるとこんなノリが生まれるんだ!」と、リズムの構造を体験するのにぴったりです。
URL: https://musiclab.chromeexperiments.com/Rhythm/

10歳からわかる「まとめ」

太鼓(たいこ)の音で体が動いちゃうのは、胸の中で「命のリズム」が鳴っているからだ!
【音楽編】の第2回だよ!
運動会の太鼓や、カッコいいドラムの音が聞こえると、思わず手がトントン動いたり、ダンスしたくなっちゃうことってあるよね?
その秘密は、キミの胸の中にあるんだ!
そっと胸に手を当ててみて。「ドクン、ドクン」って、心臓(しんぞう)が動いているよね。
人間は、お母さんのお腹の中にいるときから、この心臓のリズムをずーっと聞いて育ったんだ。
だから、ドラムや太鼓などのPercussion (パーカッション=打楽器) の音を聞くと、体や脳が「生きているリズムだ!」って思い出して、勝手にワクワクして動いちゃうんだよ!
インドネシアのバリ島にある「ガムラン」という音楽では、太鼓や金属、それらの音をみんなで高速で打ち鳴らすことで、みんなの心がひとつに溶け合っちゃう不思議な体験(トランス)をするんだって!
リズムは、言葉が通じない世界中の人とも、一瞬で「ノリ」を合わせて仲良くなれる地球上で一番古い魔法の言葉。
キミの手拍子や足踏みも、立派なドラムだよ! 自分の命のリズムを感じながら、みんなで楽しく拍手(はくしゅ)を叩きあってみよう!

*本原稿は、ジェミ兄さんとの対話を基に構成されました。

※この記事では、音楽のビートについて、少し掘り下げて考えてみました。