
個人かグループか、個人からなるチームか
探究活動への初期の取り組みはグループ活動として実施する学校が多いように見えます。探究活動の「低学年化」が進んでいる現在ですから今後についてはわかりませんが、今のところ、中学に入学したばかりの生徒のほとんどはグループ探究から取り組み始めます。2人から5人程度で作るグループで共通のテーマに挑んでいる様子をよく見かけます。当初は与えられたテーマについての探究も多く、進め方に慣れることを第一義として、仲間との相談・共同作業がしやすい形態であるグループ探究が選ばれているようです。
友人と相談しながらの活動には意味があります。話し合いをすることで、自分一人では気付けなかったことに触れる機会が得られるからです。誰か一人がリーダーシップを取り、残りのメンバーはいつも言われた通りに動くだけということではなく、全員がパート毎に交代で主導していくことができれば、それぞれが経験を積むことができるでしょう。
そうして探究活動の進め方に慣れたら、各人が興味を抱くテーマをそれぞれ決め、個人探究に取り組むのがよいであろうと私は思います。グループでの探究には良い面もありますが、悪い面もあります。意見が異なった時に、妥協しなくてはならないことが出てくる点です。個人探究であれば、やってみてうまくいかずにやり直すことができます。しかし、グループだと試しにやってみたいという気持ちを抑えなくてはならないメンバーも出てきてしまいます。したがって、どこか早めの段階で個人探究に移ることを推奨します。ただし、ここでグループを解散する必要はありません。むしろ残しておきたいと思います。もちろん、改めて組んでも構いません。その場合、出席順等で機械的に組むのも一考です。このグループは何のためかといえば、お互いが助言者として関わるチームです。テーマそのものはお互い別々のものに取り組みます。しかし、誰かが行き詰まった時や、たまに第三者の目で現状を見てもらいたいと思ったような時に、助言者として活躍する仲間です。3人から4人でこのようなチームを予め組んでおくと、定期的にお互いの進行具合を報告し合う仲間として、また、必要に応じて相談に乗り合う仲間として機能する仕組みが出来上がります。その意味で普段からの仲良し関係でチームを作らない方がよいと判断されるなら、機械的方法での編成を考慮しましょう。
学内探究発表コンテスト
チームですから、協力体制の出来不出来を、他のチームと競わせたいものです。チーム対抗戦を実施して、各チームの得点の多寡で学内の優勝チームを決めるというのはどうでしょうか。
評価項目や基準も生徒から案を出してもらい、その共通フォーマットに則って個人の得点を計算します。その合計点でチームの総得点を算出して優勝チームを決めます。評価項目は色々と考えられますが、簡単なところでは、・発表シートの枚数制限(何枚以上何枚以内)が守られていたか、・発表の制限時間が守られていたか、・漢字の間違いや誤字脱字がなかったか、等が考えられます。各項目につき、満点を例えば5点として、枚数制限については1枚のズレ毎に1点ずつ減点、制限時間については1秒でもオーバーしたら減点1とし、以後10秒毎に減点を加えていく、文字の間違い等は一つにつき減点1などと決めていきます。これらについては、チーム内の他のメンバーが事前チェックをしたり、練習に充分付き合ったりすることで減点を回避できるものです。
一方、・文字の大きさやフォントや色は読みやすさを考慮して決められていたか、・自分の考えがしっかり述べられていたか、・その論を裏付ける資料などの提示があったか、・わかりやすさや伝わりやすさを高めるために情報の見せ方(グラフ化や図解化)に工夫がなされていたか、等については、評価基準の作り方に少し工夫が必要でしょうが、これらも有効な評価項目でしょう。また、これらについて高得点を獲得しようとすれば、チーム内で真剣に意見を述べ合い議論を尽くすことが、より大切になってくるはずです。
仲間の発表への接し方
同じ学校で学ぶ生徒同士も、同じ発表の場にいる他校の生徒も、同じ時と場という共通のシーンを共有している点では「仲間」と呼びたい関係です。上記のチーム戦は、今のところ特殊ケースで、普通は敵も味方もなく仲間の発表を聞くでしょう。先輩が後輩の発表を聞くことも、その逆もあるでしょう。後輩が先輩の発表を聞く際にはなかなか持ちづらい感情かもしれませんが、誰かの発表を聞く際に持っていてもらいたいのは、「この人の発表をさらに良くするにはどうしたらいいだろうか」という気持ちと態度です。そうして、何かもっと良くするために工夫できそうなことがないだろうかという目と耳で発表を聞きます。そのようなことが何も見つからないほど素晴らしいと感じたら、その感想を口にすればいいのです。きっと、「ここもそこも素晴らしかった」とその箇所を具体的に、時には自分の考えと比べながら挙げて説明できるはずです。一方、「おやっ?」と思う箇所があった場合には、「どうして、このようにしたのですか?」と確認してみましょう。質問の最初は確認です。そう捉えれば、質問することを大袈裟に考えなくて済みます。それに対する発表者の答えを聞いて、なるほどそういう理由があったのかと理解できて納得すれば、確認は終了です。それでも、こういうふうにできそうだという案があるなら、それを話してみればいいのです。そこで、相手に何か新しい気づきがあるなら、発表後のやり取りはとても充実したものになります。発表後に活発なやり取りが生まれることは、発表者に対し、発表への感謝の気持ちを伝えるのに最適の方法です。感じたことを積極的に発表者や他の聴衆と共有することは、ある意味、礼儀とも呼べるものです。恥ずかしがらずに行いたいものです。
教師の接し方も同様
教師が生徒と接する場面は、探究活動の最中であることが多いと思います。教師も、何かを教授するという気持ちで生徒に接するよりも、「この生徒の発表をさらに良くするにはどうしたらいいだろうか」という気持ちで接するのがよいでしょう。気付いた点を疑問形で伝え、次にやるべきことの候補を伝えるのです。「何々については調べてみた?」「こっちの人の話も聞いてみた?」「昨日の夜のニュースは見た?」のような感じです。ニュースで関連のテーマが扱われていたなら、それをインターネットで検索してみることを勧めてあげてください。教師の示唆や提案は、他の生徒にも有効に働きます。他の生徒の耳にも入るような場面で話すことを心がけてください。示唆の内容もそうですが、教師が発する言葉の言い回しも、子ども達はきっと参考にするでしょう。
10歳からわかる「まとめ」
・探究活動は、進め方に慣れたらグループ探究から個人探究に移りたい。グループの場合は、グループ全体の意向が優先され、自分が納得するまでやることが難しいことがある
・個人探究でも、それぞれの探究を助言するための特定のチームがあってもよいだろう
・他人の発表を聞く際は、「この人の発表をさらに良くするにはどうしたらいいだろうか」という気持ちで聞き、感じたことを素直に口に出して欲しい。それが良い質問につながっていく
・教師も同様に、「この生徒の発表をさらに良くするにはどうしたらいいだろうか」という気持ちで接し、次のアクションを示唆していって欲しい

ジャートム株式会社 代表取締役
学校・企業・自治体、あらゆる人と組織の探究実践をサポート。
Inquiring Mind Saves the Planet. 探究心が地球を救う。
