プレゼンは共感。根拠はエンジン

プレゼンが目指すのは共感

「プレゼンに共感は必要ない。それよりも正しい根拠だ」という主張を目にしました。根拠が大切ということに関して、もちろん異論はありません。しかし、根拠がなぜ何のために大切かといえば、まずは聞いてくれる人の納得を得たいからです。更に可能であれば、異論を抱いていた人からも共感を得たいからです。それを願って、狙って、行うのがプレゼンです。納得と共感は異なります。「おっしゃることはわかる」は納得。「なるほど。それで行こう」となれば共感。納得を得るところまでで終われば発表。話に心を揺さぶられて考えが変化し、自分の主張に相手の誰かが共感・賛同するようになれば、行ったことはプレゼンと呼ぶに相応しくなる。提案への共感と承認を得たいが故に、我々はわざわざプレゼンを組み立てるのです。元々こちらに懐疑的であった意思決定者から承認が得られれば大成功です。

探究学習のプロセスで行う「発表」をプレゼンと呼ぶに相応しいものにするには、まずは「調べ学習に留まっていないこと」が条件になります。調べてわかったことに対する解決策として自分はこれを提案します。その効果としてはここまでのことが期待できます。その根拠はこれです。と説得して共感・承認を得るところまでいくことを目指します。

プレゼン成功の鍵

では、このあたりからまたChatGPT4氏との掛け合いで進めていきましょう。プレゼンテーションで成功するための要素を大切な順に教えてもらったところ、1. 目的の明確化、2. コンテンツの質、3. 構成の明瞭さ、4. リハーサル、5. ビジュアルエイドの利用、6. 聞き手の理解度の把握、7. 非言語コミュニケーション、8. 環境の整備、9. 時間の管理、10. 緊張の管理、と返答がありました。

2番目に大切とされた「コンテンツの質」では、「情報の正確さ、関連性、理解しやすさに注意すること」と説明があり、エビデンスが関係するのはこのあたりだとわかります。正しい根拠情報を、主張と関連づけて正しく使い、自身の主張が相手に納得感をもって受け入れられるようにしなくてはなりません。続く「構成の明瞭さ」では、「『はじめに』『中身』『結論』の流れを明確にし、聞き手が追いやすいようにすること」とあります。この流れの「追いやすさ」は非常に大切です。「聞き手の理解度の把握」が大切なこととも関連しますが、事前知識の質や量によっては「おいてけぼり」感を味わう聞き手が出てしまいます。「追いやすさ」は、説明をどこからどの順序で行うかに影響されます。とはいえ聴衆の様子については対面するまでわかりませんから、「リハーサル」を完全に行うことは難しく、臨機応変が求められます。臨機応変の対応は心に余裕があってこそ実現できますので、事前の準備は心が落ち着くまでやる必要があります。

ところで、「ビジュアルエイドの利用」は重要度で10項目中5番目に来ています。相応という感じがします。プレゼン準備と聞いて、いきなりスライドを作り始める傾向がある人は注意したいところです。

エビデンスの効果的な使用法

エビデンスを効果的に使用するためのアドバイスを聞いたところ、1. 事実やデータ、2. 専門家の意見、3. 事例やケーススタディ、4. グラフやチャート、5. 研究結果、6. アナロジー、7. 証言やエンドースメント、8. 法的/規制上の基準、と返答がありました。順不同で聞いたため、回答にいわゆる「エビデンスレベル」は考慮されていないようでした。エビデンスレベルについては以下を参照してください。

【参照】 第23回「主張は変わってもいい」

この中で面白いと思ったのは「アナロジー」です。「複雑なコンセプトを簡単な比喩や類似で説明することで、観衆の理解を助けることができます」と説明があります。我々はついつい「エビデンスは堅く」と思いがちです。カチッとした形で提示しなくてはエビデンスらしくないとの思い込みがあるかもしれません。しかし、形式に拘ったり小難しく示したりすることで理解が遠のいてしまう可能性もあります。聞き手の理解を促進するという意味では、エビデンスの「正式な提示」に続いて「噛み砕いた説明」を加えるよう習慣付けると良いでしょう。

オーディエンスの共感を得るには

次に、プレゼンテーションで聴衆の共感を得られやすくするために注意すべき点を聞いてみました。得られた回答は、1. 聴衆を知る、2. ストーリーテリング、3. 感情的なつながりを作る、4. シンプルな言葉を使う、5. 視覚的なサポートを活用する、6. 相互作用を促す、7. 熱意を示す、8. クリアなメッセージ、9. 共感性のある言葉遣い、10. エモーショナルインテリジェンス、の10項目です。

「データや情報を単なるリストではなく物語として伝えること」、「複雑な専門用語は避けシンプルでわかりやすい言葉を使うこと」、「質問を投げかけたり聴衆の意見を取り入れたりすることで参加と関与を促すこと」、「『私たち』のような言葉を使い聴衆と自分との間に共通点を見出すこと」など大切なことが並びました。通底しているのはその日その場の聴衆にあわせた調整が必要な点で、最後の「エモーショナルインテリジェンス」に繋がります。「エモーショナルインテリジェンス」とは聴衆の感情を読み取り、その場の雰囲気に合わせてプレゼンテーションを調整する力量のことです。エモーショナルインテリジェンス(EI)のレベルを数値化したものが感情指数EQ=Emotional Quotientです。

EIレベルを高めるために

EIレベルを高める方法としては、以下の10項目が示されました。1. 反省と自己認識、2. 自己規制の練習、3. 共感力の向上、4. ソーシャルスキルの強化、5. ポジティブな態度をもつ、6. ストレス管理、7. フィードバックを受け入れる、8. 感情を表現する、9. 感情の感染を認識する、10. 瞑想やマインドフルネスの練習、です。

「感情の感染を認識する」は「他人の感情が自分に影響を及ぼすことを認識し、その影響を管理する」と説明されています。対話ですから一方的に影響力を及ぼすことはできません。プレゼンテーションは伝え手自身も聴衆の反応から影響を受けながら進めるものです。そう思えば、質問されるのを嫌がることも、フィードバックを過度に意識することもなくなり、むしろ、そのような反応をもらえることに感謝したくなるでしょう。自身の主張をエビデンスに基づき可能な限り筋道立てて組み立てられたなら、あとはやり取りを楽しみましょう。

10歳からわかる「まとめ」

・プレゼンテーションに正しい根拠は必要。正しい根拠を元に相手からの共感を得ることを目指して行うのがプレゼンテーション

・エビデンスの使い方やその効果は聴衆次第のところがある。何をどの順序で使用すると相手が話を「追いやすい」かについて、常に意識することが大切

・プレゼンテーションは聴衆との対話によって成立する。聴衆を理解するためのエモーショナルインテリジェンスを高める努力を怠ってはいけない

・プレゼンテーションは聴衆の反応から影響を受けながら進めるもの。反応をもらえることに感謝し、それを楽しもう

以下、余談です。

対話チャートの活用

相手が用いるエビデンスを元に、先方の主張を分析するには対話チャートの活用が有効です。相手は議論相手とは限りません。聴衆でも同様です。聴衆の中に別の論拠に基づく自身とは異なる意見を持っている人がいるような場合、対話チャートに入れ込んで対策を考えてみることが有効です。上記のエモーショナルインテリジェンスだけに頼るのではない、より論理的な対策が打てます。詳細については以下を参照してください。「探究チャート」の名称で説明しています。

【参照】 第15回「プレゼンよりも有効な探究チャートとは」

第35回「『総合』『探究』は何のため」を読む