探究を中高連携で計画・実施する

総合的な「学習」と「探究」

総合的な学習と総合的な探究について、平成30年告示の高等学校学習指導要領の解説には以下のような図が示されています。探究の方に書かれた「自己の在り方生き方と一体的で不可分な課題」とは何だか難しい言い回しですが、自身の生活にも強く影響する社会の課題、一歩進んで、故に解決に向けて自ずと行動したくなるような課題といったところでしょうか。いずれにせよまずは自分事として捉えられる課題が見つからないうちは、探究学習・活動に真剣に取り組むことが難しいのは間違いないでしょう。

【参照】 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総合的な探究の時間編

中学生時代に求められること

その、取り組むべき課題が見つからないことに関して、多くの高校生が入学後に悩み苦しんでいるのが現状の実態です。極端な例では、高校受験対策で1点でも多く点数を取るための勉強に時間を費やしていた間、社会への関心を自ら閉ざしていたかもしれません。私の子供時代によく使われた「疑問など持たずに今はとにかくそれをそのまま覚えなさい」の台詞が現存するなら、自分の興味が何なのかわからなくても致し方ありません。

探究について、高校でスムーズなスタートを切るためには、先の図にあったように中学生時代に「課題を解決していくことで、自己の生き方を考えていく」経験を充分積んでおくことが求められます。少なくとも、中学生時点での自身の興味・関心が何に向いているかを自覚しておくことが重要です。高校入学後、その興味・関心に関連した社会の課題にはどんなことがあるかを探し、高校3年間をかけ、その解決に向けた取り組みを続けていくのが一つの理想型でしょう。

中学3年間での達成目標

中学での目標を「自身の(その時点での)興味・関心を自覚すること」に置きます。それには、世の中のことをとにかく広く知る必要があります。知らないことについて考えを深めていくことはできません。知るためには、新聞を読む習慣を付けるのが最も良いと思います。私ならこの際、紙の新聞かインターネット配信の新聞記事かには拘りません。とにかく視野を広げるための情報に触れて欲しいと思います。

私は、特に理由もなく以前からたまたまSmartNewsのアプリをスマホに入れていて、暇があるとそれを覗いています。興味があるチャンネルを選ぶと、それがタブに現れます。私のアプリには「総合」以外に「政治」「国際」「国内」「スポーツ」「教育」「テクノロジー」などのカテゴリーの他、「福井新聞」や「福井テレビ」など個別メディアのタブもあります。「教育」のようにカテゴリー名が付いたチャンネルからは様々なニュースソースが提供している記事にアクセスできます。同じ内容のニュースでも何々テレビが伝えているものと何々新聞が伝えているものを両方比較しながら見ることができる場合もあります。興味・関心がなんとなく固まってきたら、そのカテゴリーの記事を中心に読んでいくだけでも、それなりの時間を費やすことになるでしょう。

【参照】 SmartNews

皆が興味・関心を語れるなら

高校に入学し同じクラスになった生徒たちが、最初の顔合わせで自己紹介する際、自分の興味・関心について触れ、それを聞いた他の生徒が、関連で思い付いた社会課題を挙げて交流を図るという遊びはどうでしょうか。

例えば、受験勉強中にたまに窓の外を眺めては鳥はいいなぁと思っていた子が、「鳥のように自由に空を飛べたらいいのにとずっと考えています」と自己紹介したとしましょう。すると、「もうすぐ空飛ぶ自動車ができるらしいよ」という声や、「鳥といえば鳥インフルエンザじゃないの、社会問題は」といったバラバラな声が上がります。付け足しでこんな解説や問いかけも聞けるでしょうか。「鳥インフルは、カラスが原因のこともあるらしいよ。くちばしが細いハシボソガラスは別だけど、太いハシブトは肉食を好み、渡り鳥を捕食したらしいカラスの感染が見つかったんだって」や、「鳥インフルへの感染が見つかって養鶏場の鶏を殺処分するニュースを見ることがあるけれど、日本の養鶏って世界の常識には合っていないらしいよ。アニマルウェルフェアって知っている?」等です。

最初のロマンチックな空想は台無しですが、このような雑談を通して興味・関心が広がっていくなら、高校での新しい出会いが面白い展開に繋がっていきそうだと期待をしてしまいます。

【参照】 鳥インフル、「ハシブト」が感染拡大か

【参照】 日本人の9割が知らない「アニマルウェルフェア」

探究の中高連携に向けたアイデア

さて、ここからはいつものChatGPT4氏の協力も仰ぎながら書き進めていきます。まず、中高一貫での取り組み方について聞いたところ、得られたアドバイスは、カリキュラムの統一、プロジェクトベースの学習、学際的なアプローチ、リサーチスキルの教育、外部の専門家との連携、フィールドワーク、評価方法の多様化の7つでした。特段、異論はありません。7番目の説明に書かれていた「生徒の思考や取り組み方を評価する方法の導入」の「思考の評価」は良いと感じました。生徒側には、考えた理由や変化をしっかり伝える努力が必要になりますが、それも大切なことでしょう。

次は、中高一貫校ではない、様々な中学からの進学者によって構成されるいわゆる通常の高校が、中学からの連続性・一貫性を持って探究に取り組むのに有効と思われるアプローチを聞きました。回答は、オリエンテーションプログラムの充実、基礎的なスキルの教育、共通のテーマ設定、小グループでの活動、メンターシッププログラム、探究の成果発表会、継続的なカリキュラム見直しの7つでした。3番目の共通のテーマ設定の狙いは「1年生のうちは全員が同じテーマでの探究を行うことで、生徒間の知識や経験の差を埋める努力をすること」にあるとのこと。一つのやり方ではあると思います。ただし、1年間全てをこれに使ってしまうのは勿体無いので最大で1学期間というところでしょうか。6番目の成果発表会については、私は、毎週・隔週・毎月のどれかで、生徒同士で進捗を発表し合うのが良いと思います。全体で数分以内にできる範囲で構いません。わざわざ専門家や大人を呼ばずともアドバイスし合える仲間になってもらいたいと願います。

3つ目の質問は、中学までを担当する市の教育委員会と、高校からを担当する県の教育委員会の間でのうまい連携方法を聞いてみました。ここでも7つの回答を得ました。連携のための会議体の設立、カリキュラムの情報共有、教員研修の共同実施、中高連携プログラムの実施、情報提供の強化、共同の教材開発、地域の資源を活用です。教員研修の共同実施は有効でしょうし、それが他の項目にも直接的影響を持つと感じます。一方、地域資源の活用は実践的な学びの場の提供を意図しているのですが、地域探究にばかり目を向けさせることになり、生徒個人の興味・関心からは外れてしまうことになりかねない点には、要注意です。

4つ目の質問では、共同の教材開発について、より効果が増す教材はどんなものかを聞きました。大切なことは、テーマの選定、インタラクティブな教材、実践的な内容、生徒の参加、教員のフィードバック、評価と改善、多様なフォーマットの7つでした。インタラクティブではARやVRを活用した実地調査のシミュレーションにも触れられており、7つ目の多様なフォーマットのところでも、テキストだけでなく、動画や音声、インタラクティブなWebページなど飽きさせない工夫をすべきとのアドバイスのようです。その点では、4番目の、教材の開発過程に生徒を参加させ生徒のニーズや意見を取り入れるべきとの指摘は、まさに正論だと感じます。

今回、最後の質問としたのは、生徒に自分事として探究に取り組んでもらうために留意すべきことについてです。例によって7つの回答は、関心・興味の発掘、実生活との関連性、自己表現の機会、現場体験、目標設定のサポート、フィードバックの重視、多様な価値観の尊重でした。はっとしたのは5番目の目標設定のサポートという表現です。生徒への助言は全てそこに繋がってはいるのですが、企業に対する時のようには、これまでそれを強く意識してきてはいませんでした。「(生徒は)目標設定の過程で、自分の価値観や将来のビジョンを明確にすることができます」とのこと。途中で変わって構わないのですが、ゴールイメージを最初にきちんと持ってもらうことの大切さを改めて意識しました。

10歳からわかる「まとめ」

・探究のテーマには、自分自身との関わりを強く意識できるものを選ぶことが大切

・そのためには、中学生時代に自分の興味・関心に気づいておくと、高校での探究活動・学習のスタートをスムーズに切れる

・中学生時代には、新聞などから社会の動きについてよく知り、それの自分への影響についてまで考えることを習慣としたい

・高校では、友達の興味・関心についても興味と関心を持ち、それに対する自分の意見を言えるようになって欲しい

・探究の教材開発には、教師だけでなく生徒も加わって全員であたると面白いだろう

・大人は生徒の人生の目標設定のサポートをするという意識で探究に関わることを自覚すべきだ

以下、余談です。

公立中高一貫校と「民間校長」公募

最近発表された都道府県魅力度ランキング2023で、また最下位に戻ってしまった茨城県。隣の千葉県に住んでいる贔屓目は除いたとしても、私の目には決して魅力のない県とは映っていません。むしろ、教育における取り組みはかなり先進的であると感じています。公立中高一貫校の数では茨城県は現在14校(中等教育学校3校、併設校10校、連携型1校)で堂々の全国一位、校長選考には公募を採用しています。

【参照】 校長、公募。

公立中高一貫校をこれまで持っていなかった愛知県も2025年の入試日程を先日発表するところまで来ました。遅かったとの自覚からか、特徴を出しての参入です。

【参照】 愛知の県立中高一貫4校、入試日決定

中高一貫教育に関しては、今後も色々と動きが活発になりそうです。

第33回「『対話』を介したエビデンス固め」を読む