福井県坂井市丸岡の探究

中学校・高校、探究発表会集中日

昨日・7月10日、福井県坂井市の天候は、晴れ、最高気温33度、最低気温25度、湿度80%というものでした。そのような過酷な天候のもと、午前は丸岡高校、午後は丸岡中学校の探究活動の中間発表会が開催されました。ともに坂井市探究学習アドバイザーとして関わっている学校です。いずれも「来年になれば冷房設備が入る」という体育館での実施で、となれば「今年しかもうそのチャンスはない」ということで、存分に汗だくになって楽しみました。冬季に開催される最終発表会には、おそらくコートを着たまま参加することになります。そう考えると、探究活動は、結構な長丁場での取り組みです。

丸岡中学校での冒頭挨拶

丸岡中学では、会の最後に講評するという計画だったところを、私から先生にお願いし、会の冒頭に話をさせてもらいました。そのまま掲載します。

今日の会を最大限に活かすために皆さんにお願いしたいこと

三年生の皆さんと私は、皆さんがまだ二年生の時の3学期1月から関わってきています。今年の丸岡ラバーズは1月から12月の一年で活動をしているからです。最初の回はキックオフということで、探究とは?という話をしました。先月は保護者の方がいらっしゃる場で同じような話をオンラインでしましたが、その際は、一年生・二年生も聞いてくれていたと思います。探究活動は、皆さんが社会に出る前に社会と触れ合うことのできる、とても有意義な機会です。将来社会に出れば、よく考えて正しい判断を下さなくてはならないという場面に毎日当たり前に出くわします。その時に、どう取り組めばいいのか困らないよう、学生のうちから、その時点で持っている全ての知識、全ての経験、全身全霊を傾けて一生懸命に考える。その練習・訓練をしておきましょうというのが「総合的な探究の時間」です。私が学生の頃は、知識を伝えることに授業の力点があったと感じます。その知識をどう使うかについてはなかなか時間を割くことができませんでした。それを補う役目が探究にはあります。ですから、探究は「やっつけ」で、とにかくやるだけやればいいというものではありません。締め切り優先で、肝心なところを省略してしまうのもいけません。4月以降、皆さんとは毎月お会いしてきましたが、会うたびに「よく考えましたか」という問いかけを繰り返してきたつもりです。ただテキトーに褒めても、皆さんが心から嬉しいと思うことがないことはよくわかっています。私はこれまで、仕事として、企業の新製品や新サービスの開発を手伝ってきましたが、それと同じやり方で、皆さんの活動に声がけすることを心がけてきました。皆さんを「子ども扱い」することなく「大人扱い」してきたつもりです。最初の出会いから半年経ちましたが、探究活動は思考訓練の場で、今日もその続きです。

今日ご参加の大人の皆さん、高校生の皆さん、

今日は70名から90名もの方々が集まってきてくださっていると聞いておりますが、皆さんにお願いしたいのは、「なぜ、そう考えたの?」「こういう点は考えてみた?」「言っていることとやっていることが少しズレているように感じるけど、どう?」というような問いかけを生徒にしてあげてくださいということです。生徒達の話をじっくり聞いて、今のような質問を数多くしていただきたいと思います。思考の抜け漏れを指摘してあげてください。それを元に生徒達は、12月の最終発表までに更に考え、自分達の案に磨きをかけます。「脳ミソが汗をかくまで考える」「脳ミソがちぎれるまで考える」。今日は、そのサポートをお願いします。

生徒の皆さん、

皆さんは、それに対して、しっかりと受け答えをしてください。わかったふりをせずに、アドバイスの内容に納得するまで話をよく聞いて欲しいですし、時には「反論」があってもいいと思います。皆さんは1月から半年間かけて、自分のテーマについて考えてきたのですから、もらうアドバイスの中には、「それはもう検討してみました」「始めた頃、それも考えてみたんですけど、こうこうこういう理由でそれだとうまくいかないと判断したんです」というやり取り・返しがあっても何ら不思議ではありません。私はこの半年間、皆さんがそれくらいになってくれることを願って接してきました。今日はガンバってください。

さぁ、真剣勝負です。皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。

丸岡高校でのラウンドテーブル

丸岡高校の最終パートでは、6-7名の生徒と大人がグループになり、「何のために探究をするのか」というテーマで意見を出し合いました。

今まで、小学校から高校までの校種を超え、数にすれば十は優に超える学校の児童・生徒と触れ合ってきました。「授業は面白くないが探究は好き」という生徒もいれば、ストレートに「なんで探究(なんか)をやらなくてはいけないのですか」と聞いてくる生徒にも出会いました。そのおかげで、この質問に対する答えについては、以前、自分なりに考えてみたことがあります。質問の場で生徒に即興で伝えた私の答えは、「就職試験でも結婚でも、候補者を絞り込む際の条件の中で『学歴』『学力』『成績』等は、マスコミで言われているほどには重要視されておらず、企業が採用で重視するのはコミュニケーション能力で、結婚したい人が相手を決める際に重視するのは人柄です。社会に出ると『勉強だけ出来ても役に立たないな』と職場の先輩から当て付けのように言われたり、自分でもそう感じたりすることが多いです。就職や結婚で求められる力は他にもあるけれど、どれも探究に真剣に取り組む方が身に付きそうなものです。どちらも相手があることなので、必要な場面で持てる知識等を最大限に活かせるよう感性も鍛えておくことが大事で、探究は、その練習・訓練として役立つとボクは思う」というようなことでした。

事務所に帰ってから、先生経由で彼に送ったメールには以下のエビデンスを添えました。

企業が新卒採用で重視する点の上位3つ

1. コミュニケーション能力

2. 主体性

3. チャレンジ精神

【一般社団法人日本経済団体連合会「2018年度新卒採用に関するアンケート調査結果」】

結婚相手に求めること上位3つ(男女とも)

1. 人柄

2. 家事・育児に対する能力や姿勢

3. 仕事への理解と協力

【国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査(結婚と出生に関する全国調査)」】

通常のビジネス上の思考手順がそうであるように、国も「出口」から考えているはずだと私は予想しています。

就職に苦労する人がいるなら、その人がどういう資質を身に付ければ就職しやすくなるのか。人口減少の中で子どもが増えるためには人々にまずは結婚に前向きになってもらう必要があるが、どういう人なら結婚相手に選ばれやすくなるのか。それぞれ選ぶ側の人の希望を理解し、その理想に近づける「教育」を展開すれば社会は安定するだろう。そう検討した末に「探究力の育成」に益々注力すべきだと結論づけたはず、というのが私の頭の中です。

10歳からわかる「まとめ」

・探究は思考訓練。まわりの人は、思考の抜け漏れを指摘してあげよう

・探究重視は、「出口」から考えて出てきた案のはず