TEPRO

公益財団法人 東京都教育支援機構

通称TEPRO、正式名称「公益財団法人 東京都教育支援機構」は、経営理念として、その主な想いを以下のように示しています。

・私たちは、専門性のある人材の活用や地域の人々・団体との連携・協働により、教職員のライフ・ワーク・バランスの実現に向けた学校における働き方改革や多様な学びを実現していくための対応など、都内公立学校を多角的に支援していきます。

・それらの取組が子供たちの笑顔や喜びにつながるよう、学校の応援団として次代を担う子供たちの学びを支えていきます。

【参考】公益財団法人 東京都教育支援機構

おそらく、東京都以外の全ての自治体が羨む組織が、このTEPROです。私はここに登録したところから、これまで東京都内の4つの高校と繋がることができました。中心は探究学習のサポートですが、1校には「放課後寺子屋活動」の支援で、期末テスト直前の生徒にテスト対策で英語を教えに行きました。私は教員免許を有していませんが、この時の条件にはそれが必須ではなかったため実現したことです。小学校から高校までの各公立学校はここに求人情報を提供し、私のような登録者は専用サイトから求人情報を検索します。マッチングの役割をTEPROは果たしているわけです。求人情報には、活動区分として「有期労働・パートタイム」「有償ボランティア」「無償ボランティア」の3つがあり、活動内容には「教科指導」「日本語指導」「部活動指導」「特別支援教育」「教職員の事務支援」「ICT支援」「心理・福祉の支援」「その他専門的知識・技能の活用」があります。探究支援は最後の「その他」に分類されています。

また、個人として利用するだけでなく、団体としての登録もあります。当社・ジャートム株式会社は企業・団体サポーターとしても登録しています。そこからのリンクには私自身による紹介動画も含まれています。

【参考】TEPRO企業・団体サポーター ジャートム株式会社

実は当社は、TEPROが公立学校の探究活動支援を始めた当初から関わっており、ノウハウの蓄積にも貢献してきたという自負があります。以前、課長職にあった桜庭氏は、その論文の中で当社を紹介してくれています。

【参考】探究学習を支援する人材確保について 桜庭 望

登録手続きと事前・事後研修

登録するにあたっては、登録前研修動画で学んだ後に面談を受けるという手順を取っています。実は、TEPROの「手厚さ」は、これらの研修にあると私は感じています。研修は、子ども達と接する際の言葉遣いやボディコンタクトに関する注意等から始まり、登録後はより専門的な内容へと進んでいきます。中には、ある学校の校長が代表して、学校の現状とサポーターへの期待を述べるというような内容のものも含まれます。

【参考】オンライン登録前研修

このような準備を、各学校が個別に行うことは不可能です。教育委員会に代行してもらうことも現実的ではないでしょう。準備に手間をかけている余裕がなく、「協力するよ」という外部のサポーターが見つかれば、安易に「お願いします」と言ってしまっているのが現状です。致し方のないことですが、このままでは子どものためにならないコメントを無責任に発する大人を野放しにすることにもなりかねません。

普通の大人は言葉足らず

先日、実際にこんなことがありました。地域を紹介するパンフレットを作った生徒達が中間発表でそれを紹介したところ、ある人が「手書きの方がいいのではないか」とアドバイスしたそうです。それに同意した生徒グループは、手書きに作り替えたものを最終発表で披露しました。最終発表に呼んでもらっていた私の第一印象は率直に「情報が読みづらい」でした。中間発表時点のものを見ていないため比較ができないのですが、生徒は「アドバイスをいただいて手書きにしたので良くなりました」と自信満々に発表を続けています。

しかし、キツい言い方をすれば、私には、チームが思考停止をしてしまい、冷静に判断できなくなっていたのではないかと思えたほどです。パンフレットの表紙の印象や全体的な感じは、その地域の雰囲気がより伝わってくるよう良くなっていたのかもしれません。一方、それを開いて、各お店の営業時間などを知りたいと情報を探しに行った際には、手書きで不揃いの字で書かれているために、それらを一瞬ですぐ見つけ出すのは難しいと感じてしまいました。先のアドバイザーは、もしかしたら全部を手書きにしろとは言わなかったのかもしれません。だとすれば、それを正確に伝えることに失敗しています。また、生徒がそのインプットを鵜呑みにしてしまっていたのはとても残念です。

アドバイザーが何かを伝える際には、生徒に考えてもらうための一つの視点を提供するという意識が必要です。「手書き文字も取り入れてみたらどうだろう」「絵や写真の使い方や、それらと文字の組み合わせも大切かもね」くらいの伝え方の方がより適切でしょうか。学年が上の児童・生徒には、場合によっては、右脳と左脳の違いのようなことを話してあげてもいいかもしれません。興味を持った子が検索でそれに関する情報を探してきたり、さらには、「右脳を刺激するイメージ図は紙の左側に置き、左脳を使って読んでもらいたい説明文は、反対に右側に置くといいらしい」ということにまで話を進めたりすることもあるかもしれません。そうなると、手間はかかりますが、パンフレット案を2、3種類試作してテストし、どれが一番気に入られるかを見てみよう、と生徒自らが言い出すかもしれません。その過程で、右脳と左脳の話は「その通りだな」とか「疑わしいな」とか、生徒がさらに興味を持つテーマにも発展していきそうな気がします。

このように、声かけの違いがその後の探究に影響を与えることは間違いありません。その大切な声かけを「事情をわからず、トレーニングも受けていない大人」に安易に任せてはいけないと私は強く感じます。

それくらいなら、児童・生徒同士で評価し合うこと、意見を交換し合うこと、それらをより充実した形で進行できるようにすることに、教師はもっとエネルギーを割くべきです。

10歳からわかる「まとめ」

・東京都には、TEPROという教師のための支援組織、外郭団体がある

・様々な機能を持つTEPROだが、外部のサポーターへの教育研修を充実させている点は注目に値する。これを、学校が独自に行うのは事実上、不可能。各自治体の教育委員会ですら、その労力を十分にこれにかけることはできないだろう

・トレーニングを受けていない大人を、学校がコメンテーターとして採用することには大いに問題がある

・外部コメンテーターの採用を考えるより、児童・生徒同士での評価や意見交換をより充実した形で実施できるよう、教師はそこにエネルギーを割くべき